2019ラグビーワールドカップ期間中のバルイベントによる地域活性化

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  • Regional Revitalization through <i>B</i><i>aru Ibento</i>(Bar Event)during The 2019 Rugby World Cup

抄録

<p>1.背景と目的</p><p></p><p>夏季オリンピックやサッカーワールドカップと並ぶ国際的メガスポーツイベントであるラグビーワールドカップが2019年にアジアで初めて日本で開催された。12開催都市の1つが花園ラグビー場のある「ラグビーのまち」大阪府東大阪市である。筆者は、これまで東大阪市の3地域で行われている地域活性化策であるバルイベントについて、それらの運営方法を比較し報告した(石原、2019)。本稿では、国際的メガスポーツイベントであるラグビーワールドカップ2019の開催を機に、花園ラグビー場のある「ラグビーのまち」東大阪市で行われた「東大阪ラグビーバル」について、開催されるに至る経過、実際の運営状況を把握することを目的とする。</p><p></p><p> </p><p></p><p>2.研究対象地域と研究方法</p><p></p><p>東大阪市は、大阪府中河内地域に位置する市である。市域の面積は61.81㎢、人口は502,784人(2015年国勢調査)であり、大阪市および堺市の両政令指定都市に次ぐ府内第3位の人口を擁する中核市である。東大阪市は、日本有数の中小企業の密集地であり、高い技術を持った零細工場が多数集まっている。また、花園ラグビー場のある「ラグビーのまち」としてアピールする形でまちづくりが行われている。</p><p></p><p>まず、「東大阪ラグビーバル」の開催に至る経過については「布施えびすバル」の実行委員長に、運営の状況については「なのはなバル」の事務局を務める特定非営利活動法人週刊ひがしおおさかの代表にそれぞれヒアリングを行った。また、「東大阪ラグビーバル」の開催に前後して「長瀬酒バル」と「なのはなバル」が実施されている。「長瀬酒バル」の状況については長瀬酒バル初代実行委員長に、「なのはなバル」の状況については前出の代表にヒアリングを行った。</p><p></p><p> </p><p></p><p>3.結果と考察</p><p></p><p>東大阪市でバルイベントを行っていた3地域では、ラグビーワールドカップの開催に合わせたバルイベントの開催を東大阪市に働きかけ、同市全域で「東大阪ラグビーバル」が開催されるに至った。市内全域で開催できたのは、第1に、これまで「布施えびすバル」「なのはなバル」「長瀬酒バル」といった個々の地域でバルイベントを継続開催してきたことで、「東大阪ラグビーバル」を実施する基盤ができていたと考えられる。通常は別々の運営方法でバルイベントを実施しているが、関係者間で調整し、統一の方法がとられた。実質的な事務局機能を「なのはなバル」の経験者が担ったことが大きいと考えられる。第2に、ラグビーワールドカップ2019の試合を観に来た滞在期間の短い市外からの来訪者には「東大阪ラグビーバル」の開催自体が十分浸透していなかったと思われる点がある。花園ラグビー場の最寄り駅である近鉄奈良線の東花園駅界隈で「東大阪ラグビーバル」に参画した店舗は極めて少ない。このため、東大阪市内の他のエリアに立ち寄る機会がなければ、「東大阪ラグビーバル」の開催が気付かれにくい。一方、東大阪市民にとっては、約40日間という「東大阪ラグビーバル」の開催期間に参加飲食店を利用できる機会があり、利用価値があったと思われる。第3に、東大阪市の市域面積が広く、近鉄奈良線沿線の地域とそれ以外の地域では、「東大阪ラグビーバル」の利用者に差異があったことが、今後の課題としてあげられていることである。これは、花園ラグビー場との行き来のしやすさが影響している可能性がある。</p><p></p><p> </p><p></p><p>4.まとめ</p><p></p><p>今回の「東大阪ラグビーバル」の開催は、今後改善すべき課題はあるものの、ラグビーワールドカップというメガスポーツイベントの開催に合わせてバルイベントという地域活性化策を市内全域で実施したことそのものに意義がある。市内の個々の地域でのバルイベント開催からでは得られない市内全域でのバルイベントの取組みという新たな実績といえよう。また、今回の実施により市内全域での参加飲食店の横の繋がりが形成される契機ともなっている。バルイベントのみならず、今後、市内全域という広域での地域活性化策を展開する上で参考となる取組みであったといえよう。さらに、2020年に開催される国際的メガスポーツイベントである東京オリンピック開催に係る都市における地域でのイベントの取組み等の参考にもなるであろう。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390846609819395584
  • NII論文ID
    130007822313
  • DOI
    10.14866/ajg.2020s.0_36
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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