ドイツ・北欧と日本の「夏」の気候と季節感の違いに注目した気候と音楽の学際的連携

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タイトル別名
  • Climate and music (Interdisciplinary comparison of the climate and “seasonal feeling” for summer among Germany, northern Europe and Japan, and the lesson study toward promoting the ESD teacher education)
  • (ESD的視点を取り込んだ大学での授業開発)

抄録

<p>中高緯度地域では,一般に日射の季節変化に伴う明瞭な季節サイクルが見られる。しかも,大規模な海陸のコントラストや大規模山岳との位置関係の違いによる影響も大きく受けて(アジアモンスーン等もそのような影響を及ぼす要因の一つ),中高緯度地域の中でも,季節サイクルの地域的な違いが大きい。従って,そのような季節サイクルの中で育まれる「季節感」にも,中高緯度地域間で比較してもかなり大きな違いが生じ得ることになる。例えば,ある季節について同じ語で表現したとしても(例えば「夏」とか「冬」と言っても),実は,地域毎にかなり異なる気候学的内容や季節感を意味していることになる。</p><p> ところで,持続可能な社会を築くための教育であるESDにおいて,気候教育は環境,防災,気候変動の教育として重要な分野の一つであるだけでなく,ESDの中の文化・国際理解教育においても,例えば音楽との学際的連携を通して大きく貢献しうる。更に,気候システムは種々の分野との関わりが大きいだけでなく,非線型的な絡み合い,種々の要素の関わり等で一筋縄ではいかない複雑さを持つ。従って,気候教育やそれを軸とする学際教育は,ESDの根幹として不可欠な,種々の問題の複雑な関わりや繋がり,多様性等の尊重,「異質な他者への理解」等,いわば「ESD的視点」の育成への貢献も大きい。</p><p> 以上の視点から,本グループは,主に日本やドイツ,北欧における多彩な季節サイクルや季節感を接点に,学際的知見を統合し,それに基づき小中高校,大学(特に「教師教育として」)でのESDを取り込んだ学際的気候・文化理解教育の指導法開発を行ってきた。それら一連の成果の一部は,加藤・加藤(2014『気候と音楽–本やドイツの春と歌−』,2019『気候と音楽—歌から広がる文化理解とESD—』,何れも協同出版)に体系化されている。本グループは,更に,これらの地域を中心に季節サイクルと季節感に関する学際研究とそれに基づく指導法開発を進めているが,本講演では,ESD的視点の育成(特に,「異質な他者」の理解)への第一歩として,「例えば『夏』と同じ言葉で呼ばれる季節であっても,どの地域のどんな状況であるかで,こんなに違うのだ」という点への深い気づきを促す授業を試行し,結果を分析した。</p><p> ドイツ語文化圏や北欧では,日本列島の九州〜関東に比べて夏の平均気温が低い。しかし,そこでは,「冬」(単に平均気温の低さだけでなく,日々の大きな変動の中で極端な低温日がしばしば出現)が追い出された後の「夏」という季節感が強い。一方,夏における日平均気温の日々の変動も大きく,「夏」でも平均気温が10℃少々の日の出現は両地域とも珍しくない,等,日射も含めて九州〜関東との差異は大きい。</p><p> 本講演では,以下のような2つの学際的授業実践を大学にて行った結果の中の,音楽との連携の部分について報告する。いずれも,岡山大学教育学部で毎年夏に集中講義として実施している「くらしと環境」の最終日にほぼ終日かけて実践を行った(「教職に関する科目に準じる科目」の中の,教科横断的考察力の育成を狙った科目群の一つ)。〈授業実践1〉は2015年度,〈授業実践2〉は2018年度に行った(授業者:いずれも,加藤内藏進(気象・気候),加藤晴子(音楽,ゲスト)赤木里香子(美術))。〈授業実践1〉では,ドイツと日本の気候を比較するとともに,季節の行事や季節を歌った歌から当該地域に住む人々の季節感を意識する活動の後,ドイツと日本の各々の夏を表現する〈替え歌づくり〉の創作活動を行った(“Alles neu macht der Mai”《5月はすべてを新しくする》(有名な《蝶々》の旋律と同じ)を利用)。〈授業実践2〉では,ドイツ及び北欧と日本の気候を比較するとともに,日本の夏祭りやフィンランドの夏至祭の映像の視聴や民謡等の鑑賞を行った後,フィンランドと日本の夏について,《ふるさと》(高野辰之・岡野貞一)の旋律を利用した替え歌づくりを行った。活動等の詳細や結果の分析は,当日行う。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390846609819446784
  • NII論文ID
    130007822048
  • DOI
    10.14866/ajg.2020s.0_157
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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