世界のジオパークとの比較から見た日本のジオパーク

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  • Comparison between Japanese geoparks and geoparks in other countries

抄録

<p>世界のジオパークとの比較から見た日本のジオパーク</p><p></p><p>Comparison between Japanese geoparks and geoparks in other countries</p><p></p><p> </p><p></p><p>渡辺真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)</p><p></p><p>Mahito WATANABE (Geological Survey of Japan, AIST)</p><p></p><p> </p><p></p><p>キーワード: ユネスコ世界ジオパーク,比較,運営体制,保全,教育,持続可能な開発</p><p></p><p>Keywords: UNESCO Global Geopark, comparison, management structure, conservation, education, sustainable geopark</p><p></p><p> </p><p> </p><p> 世界各地のジオパークを比較することで日本のジオパークの特徴を明らかにすることができる.それには相当な調査・研究が必要である.本講演では,議論の糸口として,演者の経験に基づき印象論となることを恐れずに,比較の際に重要な観点を整理し,世界各地のジオパークを予察的に比較し,日本のジオパークの特徴を見てみたい.</p><p></p><p> 国ごとにユネスコ世界ジオパークの法的位置づけが異なり,さらに行政システムを反映して運営体制に違いが生まれてくる.地方自治がどの程度裁量権を持つかは国によって大きく異なり,意思決定のプロセスや仕組みはそれが属する社会の伝統や仕組みによって異なる.民主主義やボトムアップはもともと世界の一部地域で生まれたやり方であり,それが当然かどうかは地域による.ジオパークにおける意思決定のプロセスに関しては,演者は東アジア各国は相互に類似しているという印象を持っている.</p><p></p><p> ジオサイトの保全に関しては,法の整備状況と保全に関する行政の体制や社会の関心により状況が異なる.日本は天然記念物制度や無形遺産などジオパークに関わる制度が早くから整備された国の一つである.</p><p></p><p> ジオパークの教育の方向性ややり方も社会状況により異なる.地学的自然と人の暮らしとの関わりを伝える,というのは,教える側にとっても簡単なことではないのが普通である.教育のやり方については地域差がかなりあり,東アジアでは儒教の影響を感じることがしばしばある.日本では防災教育への関心が高いが,そうでない国も多い.</p><p></p><p> 持続可能な経済活動については,現状と目指すところが様々である.観光で貧困から脱出しようとする地域,働き盛りの世代がジオパークを経済活動に活かそうとする地域,豊かなお年寄りが保全と教育をもっぱら行う地域など地域による違いが大きい.</p><p></p><p> 以上のような観点による国際比較から見て,演者は日本のジオパークに次のような印象を持つ.日本ではジオパークに法的な裏付けはなく,したがって運営に関して国の関与やコントロールはあまりなく,地方自治体にはある程度の裁量権がありジオパーク活動の主導権を握っている.にもかかわらず活動にあまり創意工夫が見えない.ボトムアップが可能な行政・社会の仕組みのもと,住民に自分で考えて自分で決めようとする意識は薄く見える.地質遺産の保全に活用できる法的な枠組みはあるものの,社会的な関心の薄さからジオサイトの保全に充分生かされていなかったが,徐々に改善しつつある.防災教育を中心に教育活動への熱意は高く,ジオパークをきっかけに自然を観察して自ら考える教育を行おうとしている地域もある.「持続可能な開発」という概念はなかなか浸透していない.様々な理由から働き盛りの世代のジオパーク活動への参加が活発でなく,ジオパークと経済活動との関わりは薄い.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390846609819465984
  • NII論文ID
    130007822228
  • DOI
    10.14866/ajg.2020s.0_260
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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