持続可能な開発目標(SDGs)の保健目標とジェンダー目標を相乗的に達成するには:日本とイギリスの比較研究から

  • 村上 仁
    国立国際医療研究センター国際医療協力局
  • 神田 未和
    国立国際医療研究センター国際医療協力局
  • 中島 玖
    公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン
  • 澤柳 孝浩
    公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン
  • 曽我 建太
    公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン
  • 濱田 憲和
    公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン
  • 池上 清子
    公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン 長崎大学熱帯医学グローバルヘルス研究科

書誌事項

タイトル別名
  • How can health and gender goals of the Sustainable Development Goals (SDGs) be pursued in synergy?: a comparative analysis between Japan and the United Kingdom

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説明

<p>目的</p><p>  本研究の目的は、日本でSDGsの保健目標(目標3)とジェンダー目標(目標5)を相乗的に達成していくために日本が取るべき具体的方策を、ジェンダー分析に基づいた日本とイギリスの比較から明確化することである。</p><p>方法</p><p>  日本では、ジェンダー平等を目指して活動する機関のジェンダー専門家8名と産婦人科医2名に、イギリスでは、保健とジェンダーの分野に深く関わりのある政府組織、市民社会、アカデミアから9名に、性と生殖に関わる健康・権利ならびにジェンダーに基づく暴力対策の現状につき、詳細面談および文献調査を実施した。テープ起こしをした原稿につき、質的内容分析を実施した。</p><p>結果</p><p>  「避妊・人工妊娠中絶」、「性感染症対策」、「性教育」、「婦人科系がん対策」、「ジェンダーに基づく暴力対策」の各項目につき、ジェンダー視点からみた日英の現状を明らかにした。比較の結果、特に「避妊・人工妊娠中絶」、「性教育」、「ジェンダーに基づく暴力対策」につき、両国の取り組みに差が見られた。イギリスではジェンダー・トランスフォーマティブ(女性の状況の改善だけでなく女性の社会的地位を改善し、彼女たちが権利を十分に行使できることを目指す)な取り組みが行われている一方、日本ではそのような取り組みに未だ踏み出していない施策として、1)避妊法の選択肢の確保と費用の低減化(緊急避妊薬へのアクセス改善を含む)、2)人工妊娠中絶を女性の意志のみで実施できるようにすること、3)人間関係を含めた包括的な性教育の体系的な実施、4)ジェンダーに基づく暴力に対応する戦略策定の4点が明らかとなった。</p><p>結論</p><p>  結果から導かれた4点を進めることで、日本においてSDGsの目標3と目標5を相乗的に達成していけると思われる。そのためには、政策決定への市民社会の参画の拡大と、女性議員比率の向上が助けになると考えられる。</p>

収録刊行物

  • 国際保健医療

    国際保健医療 35 (1), 49-64, 2020-03-20

    日本国際保健医療学会

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