好酸球性副鼻腔炎の病態に重要な自然免疫反応

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抄録

<p> 好酸球性副鼻腔炎の病態の分子病態については, 免疫学の発展に伴い徐々に明らかになってきている. そして, 好酸球性副鼻腔炎は, 自然型アレルギーの関与が強いことが知られている. この自然型アレルギーというのは, 抗原の感作なしに2型サイトカイン (IL-4, IL-5, IL-13) 産生を誘導する反応である. さて, その自然型アレルギーの起点となっているのが, 鼻粘膜上皮細胞である. そして, 鼻粘膜上皮細胞から好酸球性炎症を引き起こすサイトカインである TSLP, IL-25, IL-33 が産生され, これらは上皮由来サイトカインと呼称されている. 鼻粘膜上皮細胞が, ブドウ球菌, 真菌, ウイルスなどの病原体, プロテアーゼ (蛋白分解酵素) などに反応し, 上皮由来サイトカインの産生は誘導される. また, プロテアーゼは, 物理的または生化学的バリア機能を担う分子を切断し上皮細胞のバリア機能を破壊すると考えられている. バリア機能の低下によって, アレルゲン粒子に由来する種々の物質が, 上皮細胞下にアクセスすることが可能となり, 種々の免疫応答を増強する. 上皮細胞から産生された上皮由来サイトカイン (TSLP, IL-25, IL-33) は, 2型自然リンパ球 (ILC2) や病原性記憶 Th2 細胞を介して大量の2型サイトカイン産生を誘導し, さらに B 細胞からのポリクローナルな IgE 産生を誘導して, 好酸球浸潤, ムチン産生, 杯細胞の過形成など好酸球性副鼻腔炎に特徴的な組織像が形成されると考えられる.</p><p></p><p> 難治性疾患である好酸球性副鼻腔炎はステロイド以外に有効な薬物療法がなく, 新たな治療手段の開発が求められている. これら一連の分子病態メカニズムをブロックすることが, 治療に結び付くと想定されている. 近年, 2型サイトカイン, IgE に対する新たな分子標的薬が開発され, その臨床効果が検討されている. さらに上皮由来サイトカインに対する分子標的薬も開発途上にある. 今後の新たな治療を考える上で, 好酸球性副鼻腔炎の分子病態を把握することが重要と思われる.</p>

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