台風の外側における風蒸発フィードバックが台風の発達に及ぼす効果

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  • Effects of Wind-Evaporation Feedback in Outer Regions on Tropical Cyclone Development

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抄録

台風強化に対する風蒸発フィードバックの役割を調べるため、台風の外側にある弱風域(地上10mの風速が5、10および15 ms-1未満の領域)に焦点を当てた数値実験を行った。非静力学雲解像数値モデルにおける大気海洋間の交換係数のうち、水蒸気フラックスの計算に現れる地上10mの風速に下限値を導入した。この下限値を段階的に変化させる理想実験により、弱風域における過剰な海面蒸発が台風の発達に与えるインパクトを調べた。その結果、下限値を導入しない標準実験に比べ、発達期には下層(高度100m以下)の動径方向の水蒸気コントラストが減少し、成熟期(台風形成から150時間後)には台風のサイズが30~33%、強度が5~14%、それぞれ減少した。弱風域の蒸発量の増加が外側の対流を活発化し、下層では台風内外の気圧差を減少させた。結果として、台風中心への流入および角運動量の台風中心への移流が減少し、外側の対流の強化によって壁雲内の対流が抑制され、二次循環を弱化させ、台風の強度を弱めた。加えて、弱風域の対流はレインバンド(台風中心から半径300km内の降水帯)の発達を抑制した。以上の結果は、台風の発達には、下層での動径方向の水蒸気コントラストを強くする風蒸発フィードバックの寄与が重要であることを示唆しており、弱風域の役割を解明することで台風の発達過程がより正確に理解できると考えられる。

収録刊行物

  • 気象集誌. 第2輯

    気象集誌. 第2輯 98 (2), 319-328, 2020

    公益社団法人 日本気象学会

参考文献 (37)*注記

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