腰痛及び腰下肢痛に対する理学検査とその意義

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  • ヨウツウ オヨビゴシ カシツウ ニ タイスル リガク ケンサ ト ソノ イギ

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説明

<br> 腰椎部(lumbar spine)は、5 つの椎体、椎間板、椎間関節と軟部組織により構成され、体幹運 動の大部分がこの部で行われている。椎体、椎間板の主な役割は荷重に耐えることであり、特に 椎間板は力学的荷重にさらされている。それに対して椎間関節と軟部組織は椎間の動きを制限す ることが主な役割である。同時に、体幹の安定性が要求されることから、日常生活動作や運動に おいて常に機械的負荷が加わっている。こうしたことから、腰椎部は比較的若年時から退行変性 を含めた様々な障害をきたしやすい部分といえる。 <br> 腰痛診療ガイドライン2012 における腰痛の概念は、触知可能な肋骨下縁から殿溝までで、期間 別では急性腰痛(発症から4 週間未満)、亜急性腰痛(4 週間以上3 か月未満)、慢性腰痛(3 か 月以上)と定義されている。また、急性腰痛のトリアージでは原因の明らかな腰痛(特異的腰痛) は15%程度で、原因が明らかでない腰痛(非特異的腰痛)は85%を占めると報告されている。 <br> 腰痛及び腰下肢痛は、鍼灸手技療法の臨床で取り扱う頻度の高い症状の1つであるため、病態 を詳細に把握するとともにyellow flags(心理・社会的因子)を常に念頭に置き、red flags(腫瘍や 炎症、骨折、馬尾症状等)を見逃さないよう、診療に当たらなければならない。 <br> 日常の診療でおこなっている理学検査は、病態把握や予後の推測、またred flags を見極める一 つの手段となるだけではなく、鍼灸手技療法における治療部位を選択するための基準となること から、極めて重要な所見である。また、専門医や地域の医療機関と連携するための共通言語とし ても理学検査を十分習得することが不可欠である。

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