日常診療で失語症を診るということ

  • 本村 暁
    行橋記念病院神経内科、認知症医療センター

書誌事項

タイトル別名
  • Aphasia examination in everyday clinical practice
  • 教育講演 日常診療で失語症を診るということ
  • キョウイク コウエン ニチジョウ シンリョウ デ シツゴショウ オ ミル ト イウ コト

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説明

<p>【要旨】著者の約40 年の失語症臨床の経験の一端を述べた。</p><p> 1. 失語症候における復唱の臨床的な意義について、脳血管障害による失語症症例について、標準失語症検査と自作の復唱検査を用いて検査し、以下の結果を得た。</p><p> 1)標準失語症検査の「単語の復唱」成績から、症例群を「復唱障害なし」「復唱障害あり(partial error)」「復唱障害あり(total error)」に分類し、病型(脳梗塞、脳出血)、病変部位、重症度(主成分分析“0-1 スコア”)との関係を検討した。</p><p> (1) 「復唱障害あり」群(partial error およびtotal error)は、病因では脳梗塞例に有意に多く、病巣部位では大脳皮質を含む例に多かった。</p><p> (2) 各群の失語症全体の重症度を0-1 スコアでみると、「復唱障害なし」<「復唱障害あり(partial error)」<「復唱障害あり(total error)」の順に重症となった(ここで、不等号の“大なり” は重症であることを表わす)。</p><p> 2) 著者作成の復唱検査(無意味音節、語、短文)を用いて検査し、以下の結果を得た。</p><p> (1) 語と短文の復唱成績の比較(復唱可能な最大音節数)を行った。語より短文で長い復唱が可能な群(文・復唱良好群)と、語で長い復唱可能な症例、および差がない症例(語・復唱良好群)に分けると、文・復唱良好群では語の復唱成績が語・復唱良好群より良好であった(長い音節の復唱が可能であった)。</p><p> (2) 復唱のサンプルを類型化し、失語分類との関係を検討した。</p><p> 復唱は課題を再表象して表出する過程であるが、この過程は、音の処理、語彙・意味の処理、文産生の過程が並列に作用すると考えた。</p><p> 2. モノグラフ「臨床失語症学ハンドブック」刊行と脳卒中研究会での討論をもとに、脳血管障害による失語症の実臨床における意味を10 章にまとめた。さらに失語症の自己観察の記録についても述べた。</p><p> 3. 今後解明されるべき問題として、脳と文法、漢字と仮名の問題についての著者の考えを述べた。</p>

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