新潟清酒の変遷と日本酒学

DOI

抄録

【新潟清酒の歴史】日本酒の起源は弥生時代に大陸から水稲が伝来してきてからと言われていますが,新潟県の酒造りの歴史は新潟県酒造組合の資料によると,およそ千年前の奴名川姫の伝説から始まります。糸魚川の奴名川神社の旧記に「翡翠の女王,奴名川姫が大己貴神(おおなむちのかみ)(大国主命)をもてなすのに沼垂(ぬまたれ)の田(水田)の稲を用いて醸した甜酒(たむさけ)をもってした」との記述があります。<br>新潟には酒蔵が88ありますが,その中で最も古いのは長岡の酒蔵で戦国時代1548年の創業です。江戸時代には酒は完全に嗜好品となっており,酒造家は地主で,余剰米から清酒を造っています。新潟の酒造業が今のような産業として成り立ったのは明治以降の事です。<br>【新潟県の清酒産業】新潟県は年間約4万kl(2018年度)の清酒を出荷し,全国都道府県中第3位です。また,一人当たりの清酒消費量が全国一(11.3ℓ/2017年)となっています。<br>新潟清酒の特徴は「淡麗」の表現にみられるように,豊かな味わいとすっきりとした後味の軽さを併せ持つところにあります。これらは原料米の性質,水質,醗酵環境(気候条件),醸造技術等が相互に影響して得られる結果です。<br>出荷製品に占める吟醸酒などの高級酒(特定名称清酒という)の割合が高いことも特筆され,特に吟醸酒は全国一のシェア(19.6%)を誇り,新潟清酒の展開戦略の柱となっています。<br>【日本酒学】2018年4月1日に新潟大学,新潟県酒造組合,新潟県が3者連携のもと新潟大学に世界初の「日本酒学センター」が設置され,日本酒学の講座がスタートしました。日本酒学とは従来からある醸造学・発酵学に加えて総合大学である新潟大学の強みを生かし,日本酒にまつわる歴史,文化,健康,建築,経済,海外展開などあらゆる分野をカバーする学問です。ワインにワイン学があるように日本酒にも日本酒学を構築し日本酒に係る「教育,研究,情報発信,国際交流」に関する事業を展開していこうとするものです。開講時,募集定員200名のところ820名以上が応募し300名でスタートしました。2年目の2019年も同様に820名以上が応募し350名で授業が行われました。学生の日本酒学への関心の高さがうかがえます。日本酒学を学んだ学生が将来日本酒の「伝道師」となり世界に日本酒を発信していくことが期待されています。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390848250131628416
  • NII論文ID
    130007880445
  • DOI
    10.11277/stomatology.69.48
  • ISSN
    21850461
    00290297
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ