人工呼吸器の今昔
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- 山谷 和雄
- 医療福祉センター 札幌あゆみの園 麻酔科
書誌事項
- タイトル別名
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- −呼吸器モードはわかりずらい?−
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説明
重症心身障害児者(以下、重心)の医療的ケアの一つである人工呼吸管理は、治療の手段はもちろんであるがQOLの向上には必要不可欠になってきている。人工呼吸器の目的は、低酸素血症の是正、高二酸化炭素血症の是正、さらに呼吸仕事量の軽減にある。重心における呼吸障害の要因は、大きく4つに分けられる。1つは、誤嚥・分泌物貯留による感染や無気肺等による呼吸不全。2つ目は、筋緊張の亢進や低下、喉頭軟化や気管・気管支の狭窄・軟化等による閉塞性の換気障害。3つ目は、脊椎側彎や胸郭扁平化などによる変形拘縮や、呼吸関連筋の活動異常による拘束性の換気障害。4つ目は、中枢性の低換気である。重心においては、換気障害の是正と呼吸仕事量の軽減が主たる目的であると思われる。しかしながら、人工呼吸器の発展に伴い、呼吸器関連用語が増え、さらには機種による表現の違いから呼吸器モードが複雑化しているのも事実である。現在、在宅を含め、非侵襲的陽圧換気法(NPPV)が盛んに施行されてきているが、人工呼吸器の歴史を紐解くと、1970年代にはすでに行われていた。また、陽陰圧式呼吸器の元祖は1838年に初めてfull-bodyの陰圧式呼吸器が出現したことに始まる。1950年代のポリオの流行で、いわゆる「鉄の肺」が呼吸管理に大活躍をしたが、その後、気管挿管や気管切開による陽圧式換気法、いわゆる侵襲的呼吸管理(IPPV)が生存率を上げるということで主流となった。IPPVは、当初volume controlでpatient triggerではなくmachine triggerであり、I/E比は1:2に固定され、モニターは一切無かった。しかし、1970年代初めにはアラーム機能が付き、1973年にintermittent mandatory ventilation(IMV)が導入され、その後、自発呼吸にsynchronizeするSIMVに変わった。さらに、pressure supportやpressure controlが導入された。これは、それまでの人工呼吸器からの離脱方法として、SIMVの回数を減らして、さあ頑張れと尻を叩くがごとくに呼吸仕事量を増やして自発呼吸を促していた時期から、呼吸仕事量を減らして離脱を容易にする方法へと切りかえらせた。今では、assist/control(A/C)、pressure support ventilation(PSV)に似たproportional assist ventilation(PAV)、airway pressure release ventilation(APRV)、biphasic positive airway pressure(BIPAP)など、多くのモードがある。さらに、目標とする一回換気量を得るために吸気圧を自動で調節する方式があるが、pressure regulated volume control(PRVC)、volume assured pressure support(VAPS)、average volume asured pressure support(AVAPS)、volume support ventilation(VSV)、target volume(TgV)など人工呼吸器の機種により表現が異なるために混乱も招く。今回の講演では、日常よく用いられる呼吸器モードについて解説し、人工呼吸器の理解の一助になることを願っている。 略歴 1981年札幌医科大学医学部卒業、麻酔科学講座入局 1982年10月~1983年9月 帯広厚生病院麻酔科 1984年4月~1985年3月 旭川赤十字病院麻酔科 1986年8月~1988年3月 道立小児総合保健センター(現:北海道立子ども総合医療・療育センター) 1988年4月~1989年12月 室蘭日鋼記念病院 1990年4月~1993年3月 札幌医大病院救急集中治療部 1993年4月~2007年3月 札幌鉄道病院麻酔科(緩和ケアチーム兼任)(現:JR札幌病院麻酔科) 2007年4月~ 医療福祉センター札幌あゆみの園
収録刊行物
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- 日本重症心身障害学会誌
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日本重症心身障害学会誌 41 (2), 196-196, 2016
日本重症心身障害学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390848250134904320
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- NII論文ID
- 130007885969
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- ISSN
- 24337307
- 13431439
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可