亜ヒ酸毒性発現に関わる細胞内糖代謝シグナル

DOI
  • 高橋 勉
    東京薬科大学薬学部公衆衛生学教室 東北大学大学院薬学研究科
  • 黄 基旭
    東北大学大学院薬学研究科
  • 永沼 章
    東北大学大学院薬学研究科
  • 藤原 泰之
    東京薬科大学薬学部公衆衛生学教室

書誌事項

タイトル別名
  • Intracellular glucose metabolic pathway involved in arsenite toxicity

抄録

<p>ヒ素は環境中に広く存在する有害物質であり、地下水が高濃度ヒ素で汚染された地域の住民の健康障害が大きな問題となっている。ヒ素の慢性的な曝露は、がん、糖尿病や心血管疾患など様々な疾患の発症リスクを上昇させることが知られている。しかしながら、ヒ素の毒性発現に関わる分子メカニズムは未だ完全には解明されていない。</p><p>我々は遺伝子改変酵母ライブラリーやヒトゲノムワイドRNA干渉ライブラリーを用いた細胞の薬毒物に対する感受性を指標とした表現型解析を利用した網羅的遺伝子スクリーニング法によって、亜ヒ酸の毒性発現に関わる遺伝子を多数同定することに成功した。同定された遺伝子の中には、解糖系やペントースリン酸経路など糖代謝に関わる酵素をコードする遺伝子が多数含まれており、亜ヒ酸の毒性発現およびそれに対する防御応答において糖代謝経路が重要な役割を果たしている可能性が示唆された。その中でも細胞生存に関わる種々の生理活性物質の合成に関わるペントースリン酸経路について検討を行い、酵母細胞およびヒトがん細胞において亜ヒ酸がペントースリン酸経路の非酸化的段階に関わる酵素群の発現を抑制することで核酸の合成に必須なリボース-5-リン酸の細胞内レベルを低下させ、細胞毒性を発現させることを見出した。また、AMP-activated protein kinase(AMPK)の活性化が、糖代謝の恒常性維持に関わる転写因子の抑制を介して亜ヒ酸毒性を増強することも明らかになった。さらに、亜ヒ酸はAMPKを活性化させたことから、亜ヒ酸がAMPKによる糖代謝調節シグナルの活性化を介して自身の毒性増強に関与している可能性も考えられた。以上のように、亜ヒ酸は糖代謝経路やそれを調節するシグナル経路の破綻を介して細胞毒性を発現している可能性が考えられる。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390848647545223552
  • NII論文ID
    130007898671
  • DOI
    10.14869/toxpt.47.1.0_w6-5
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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