海外便り:香港の教育・研究事情を覗いてみると

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  • カイガイ ダヨリ ホンコン ノ キョウイク ・ ケンキュウ ジジョウ オ ノゾイテ ミル ト

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抄録

筆者は勤務校の在外研究制度を利用して2012 年9 月3 日から1 年間,香港中文大學に客員研究員として滞在する機会をえた。香港には過去に,1993 年3 月と2012 年3 月の計2 回,訪れている。前者は中国返還前のまだ九龍城や啓徳空港があった頃の個人旅行,後者は今回の在外研究の下見を兼ねた調査旅行で,いずれも10 日以内の短期滞在だった。この「海外便り」では数回にわたり,在外研究中の香港で見聞した様々な事柄について記したい。例えば香港の社会経済的な特徴として,「自由放任」「積極的不干預(介入)主義」「安価な政府」という表現がしばしば使われる。確かに中央銀行(発券銀行)が存在しない,法人税や所得税の最高税率が低い,付加価値税や関税が(ほとんど)ない,社会的セーフティー・ネットが乏しい(その結果として2011 年のジニ係数が0.537 と世界有数の高さ)などの特徴はある。しかし近年の高齢化などを背景に進む労働法制や社会保障制度の見直しなどをみると,この表現は必ずしも当を得ていない。また1997 年に中国に返還されたとはいえ,2047 年までは大陸(mainland)とは異なる「一國両制」の存続が法的に保証されている。しかしその内実は,日本では意外と知られていない。しかも近年は「一國両制」が順調に「一國一制」に収斂するかどうか,予断を許さない状況が続いている。こうした話題の紹介・検討は,今回の在外研究での研究テーマの一部であり,この「海外便り」でも随時取り上げる予定でいる。今回はまず,滞在地である 香港の概要を記し,次いで香港の学制と香港中文大學について紹介したい。

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