クリンツボの所属変更(ハナゴウナ科:オドリオネジニナ属)

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  • Systematic Relocation of <i>Chrystella kajiyamai</i> Habe, 1961 to the Eulimid Genus <i>Bacula</i> (Gastropoda: Vanikoroidea)
  • Systematic Relocation of Chrystella kajiyamai Habe, 1961 to the Eulimid Genus Bacula (Gastropoda: Vanikoroidea)

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抄録

<p>クリンツボは,鹿児島県加計呂麻島の打上げ死殻をタイプ標本とする微小な巻貝で,後成殻の螺肋および周縁角の特徴からChrystella属の新種C. kajiyamai Habe, 1961(リソツボ科)として記載された。同属は現在ソビエツブ科(オニノツノガイ上科)に含まれ,世界で8種が知られるが,いずれも生貝の報告がなく内部形態の情報を欠く。クリンツボも破損した死殻として報じられるのみであった。</p><p>今回,沖縄県座間味島の潮下帯から本種の新鮮な死殻を採集し,その原殻が細長い蛹型,約3階,殻表平滑で薄い褐色を帯びていることを初めて明らかにした。これらの特徴はChrystellaの諸種を含むソビエツブ科貝類のものと明らかに異なり,Baculaオドリオネジニナ属,Pyramidelloidesレイシツボ属,Hemiliostracaクテンハナゴウナ属,Eulimaハナゴウナ属の諸種を含む一部のハナゴウナ科貝類に近似する。本種の後成殻にみられる外唇縁痕もハナゴウナ科に広く共有される特徴であり,螺肋および周縁角の形状とあわせて,本種をオドリオネジニナ属に所属変更した。なお,「オドリオネジニナ属」は元来Subeulima Soubervie, 1875に対する和名であるが,Bacula H. Adams & A. Adams, 1863がその古参シノニムとされている。</p><p>オドリオネジニナ属は,タイプ種B. striolata(= Subeulima lamberti)オドリオネジニナ,B. morisyuichiroiクリンオドリオネジニナ,Bacula kajiyamaiクリンツボの3種からなる。前2種では外唇縁痕が約1.1巻き毎に刻まれ,螺塔は強く右に曲がるが,クリンツボの外唇縁痕は不規則に生じ螺塔はまっすぐである(なお,これらの特徴はハナゴウナ科の属内で比較的変化しやすい)。いずれの種についても寄生生態に関する知見はないが,原殻・後成殻の類似から,上記レイシツボ属,クテンハナゴウナ属,ハナゴウナ属の諸種と同様,クモヒトデ類を宿主とする外部寄生者である可能性が高い。</p>

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