医療福祉の対象についての研究――1990年代以降における対象論と援助論の一般化批判として――

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タイトル別名
  • The Object of Medical Welfare: Criticism of the Generalization of Object Theory and Aid Theory since the 1990s
  • イリョウ フクシ ノ タイショウ ニ ツイテ ノ ケンキュウ : 1990ネンダイ イコウ ニ オケル タイショウロン ト エンジョロン ノ イッパンカ ヒハン ト シテ

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抄録

<p>1990年代以降において,雇用の不安定化や高齢化などにより貧困問題は拡大し,同時に社会保障制度は本来の対象を見失ってきている.そして,医療ソーシャルワーカーは,医療制度改革により退院援助業務に傾斜するなかで,社会科学的な対象認識が希薄になりつつあるように感じられるのである.</p><p>本研究では,今日における医療福祉の対象を規定するために,退院援助対象者の生活実態を量的な事例調査により明らかにした.援助対象者には低所得貧困問題と社会的孤立問題をあわせもつ者が少なくなかった.それは疾病により生じているというよりも,むしろ労働に規定されていた.低位な社会階層に規定されて重層的に生活問題は形成されていく.そこに疾病が加わり「疾病と貧困の悪循環」のなかで,さらに生活は低下することになる.近代社会の社会階層構造により必然的に生み出される低所得貧困問題,これを中核とした対象認識が医療福祉には必要である.</p>

収録刊行物

  • 社会福祉学

    社会福祉学 61 (3), 72-86, 2020-11-30

    一般社団法人 日本社会福祉学会

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