有機溶剤中毒に合併受傷した化学損傷の治療経験

書誌事項

タイトル別名
  • Treatment of Chemical Injury Caused by Transient Lossof Consciousness due to Organic Solvent Poisoning

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説明

有機溶剤中毒に合併して化学損傷を受傷した症例を治療する機会を得たので報告する. <br> 症例は71歳の男性. 予防策を怠りワックス剝離剤を使用し床清掃を行っていたところ意識障害をきたして転倒した. その主成分である強アルカリに長時間暴露したことにより, 右腰部, 両側臀部, 両側大腿, 左下腿にⅢ度9% total body surface area (TBSA) の化学損傷を受傷した. 受傷直後に本人に病識がなく, 受傷後7日目にかかりつけ医で皮膚黒色化を指摘され当院を紹介受診した. 同日入院し, 意識障害の原因検索および創部治療を開始した. しかし, 意識障害の器質的原因は見い出されず, 使用したワックス剝離剤の成分を調査し有機溶剤中毒に起因する意識障害と診断した. 化学損傷に対しては2回の植皮術により創閉鎖を完了し, 受傷後73日目に独歩退院した. <br> 有機溶剤による労働災害は特異的な所見や決め手が乏しいことより看過される場合があり, 労働災害としての化学損傷を診療する際は慎重な問診と適切な対応が必要である.

収録刊行物

  • 熱傷

    熱傷 47 (1), 22-28, 2021-03-15

    一般社団法人 日本熱傷学会

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