ストレスチェック制度における2つの高ストレス者判定方法の比較

  • 片岡 葵
    東京医科大学公衆衛生学分野 大阪医科大学研究支援センター医療統計室
  • 菊池 宏幸
    東京医科大学公衆衛生学分野 公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンター附属健康増進センターストレス・健康企画部
  • 小田切 優子
    東京医科大学公衆衛生学分野 公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンター附属健康増進センターストレス・健康企画部
  • 大谷 由美子
    東京医科大学公衆衛生学分野
  • 中西 久
    医療法人社団六医会インペリアルタワー診療所
  • 下光 輝一
    東京医科大学公衆衛生学分野 公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンター附属健康増進センターストレス・健康企画部 公益財団法人健康・体力づくり事業財団
  • 井上 茂
    東京医科大学公衆衛生学分野 公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンター附属健康増進センターストレス・健康企画部

書誌事項

タイトル別名
  • Comparison of the two methods of defining high-stress on the Japanese Stress Check Program
  • ストレスチェック セイド ニ オケル 2ツ ノ コウストレスシャ ハンテイ ホウホウ ノ ヒカク

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説明

<p>目的:労働安全衛生法が改正され,2015年12月よりストレスチェック制度が施行された.高ストレス者の判定には,厚生労働省のマニュアルにおいて合計点数を使う方法(以下,合計法)と換算表を使う方法(以下,換算法)の2つが示されている.この2つの判定方法間で,抽出される高ストレス者の割合に違いが見られる可能性が考えられるが,大規模かつ多業種の労働者集団を対象としてその違いを検討した報告はない.本研究の目的は,複数の企業で実施されたストレスチェック結果を用い,判定方法が異なることで生じる高ストレス者判定結果の差異を,個人・就労関連要因別に検討することである.対象と方法:2016年に1つの健診機関が提供するストレスチェックを行った117の企業・団体に所属する95,004名のうち,データの学術利用に同意しない者,データ欠損のある者を除いた71,422名を対象とした.調査項目は,職業性ストレス簡易調査票(57項目版)及び個人・就労関連要因(性,年代,雇用形態,役職,職種,勤務形態,業種)である.分析は,各対象者の職業性ストレス簡易調査票の回答について,合計法及び換算法により高ストレス者判定を行い,高ストレス者と判定された者の割合を全体および個人・就労要因別にカイ二乗検定で比較した.また,合計法・換算法の判定結果の組み合わせにより,両判定方法で高ストレス者と判定された群(A群),合計法でのみ高ストレス者と判定された群(B群),換算法でのみ高ストレス者と判定された群(C群),両判定方法で高ストレス者非該当の群(D群)に対象者を分類し,それぞれの割合を算出した.さらにストレス反応の下位尺度の平均値の4群間比較をKruskal Wallis検定にて行ったのち,2つの判定法に違いのあるB・C群間の比較をBonferroni法にて検定した.結果:対象者は,男性が66.8%を占め,平均年齢は43.7±11.1歳であった.高ストレス者と判定された者は合計法で11.7%,換算法で13.2%であり,合計法より換算法のほうが有意に高かった(p<.001).また,ストレス反応の各下位尺度の平均値を比較した結果,合計法でのみ高ストレス者と判定されるB群で身体愁訴の得点が高く,換算法でのみ高ストレス者と判定されるC群では,活気の低さ・イライラ感・疲労感・不安感の得点が高くなっていた.考察と結論:同一の回答であっても高ストレス者と判定される割合は合計法より換算法が全体で1.5%高く,この結果は,個人・就労関連要因別の検討においても同様であった.高ストレス者判定割合を論ずる際には,割合の値だけではなく判定方法を考慮する必要がある.さらに,合計法では換算法に比べ,身体愁訴の得点が高い対象者が高ストレス者と判定されやすい傾向が明らかになった.今後はどちらの判定方法が健康障害をより予測するかに関する知見の蓄積が望まれる.</p>

収録刊行物

  • 産業衛生学雑誌

    産業衛生学雑誌 63 (2), 53-62, 2021-03-20

    公益社団法人 日本産業衛生学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (2)*注記

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