スウェーデンの水環境における農地拡大の影響に関する研究

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  • A study on the impact of farmland expansion on the Swedish water environment

抄録

<p> Ⅰ はじめに</p><p> スウェーデンでは、19世紀初めから急速に農地拡大が始まり、ピークの1910年代には約3,800,000haを記録した。その後、スウェーデンの農地は今日まで全体としては減少傾向にある。農地減少は1960年代にピークを迎えたとされている。それ以降、今日まで農地の拡大は落ち着きを見せているが、一部では増加傾向にある地域も存在する。本論では牧草地および耕作地が増加傾向にある流域と、そうでない流域の水環境における溶存成分濃度の長期的な変動を分析し、一定の傾向がみられるかを検証する。</p><p></p><p>Ⅱ 調査地域概要</p><p> スウェーデンは北ヨーロッパ、スカンディナヴィア半島の内側に位置し、ボスニア湾に面する国である。スウェーデン中央統計局(SCB)によれば、2019年12月時点の人口は約1,033万人で、陸地面積は約41万㎢となっており(2014年)、日本の約1.2倍にあたる。</p><p> 研究対象となる地域はケッペンの気候区分ではDfに属し、平地の大部分が針葉樹林に覆われている。</p><p></p><p>Ⅲ 研究方法</p><p> 対象地域を絞るため、SCBによって公開されている自治体ごとの農地面積のデータを基に、1990年から2015年までの間に農地面積が特に増加した自治体と、特に減少した自治体を抽出した。そして、農地の増加によって有機物質の流出量が増えることを期待し、それらの自治体の河川、および湖沼の溶存物質に関する長期観測データをスウェーデン農業大学(SLU)のウェブサイトより取得し、長期的なTOCの変動傾向を分析した。</p><p></p><p>Ⅳ 結果と考察</p><p> 農地が増えた地域については、牧草地と耕作地合わせて18,786haが増加したゴットランドコミューンでは、島の中心を流れるゴットへムス川のTOCが長期的に上昇傾向にある結果となった。農地面積が増加傾向にある他の自治体からのサンプルでも同傾向を示すものは見られたものの、下降傾向を示した場所もあった。農地面積が減少している地域の第1位であるウップサーラコミューン(-4,656ha)のフィーリス川では、TOCは長期的に上昇傾向であった。減少面積第5位のスンズヴァルスコミューン(-4,146ha)では、流入河川の比較的多い湖では下降傾向であった。</p><p> 増加した農地面積が極めて大きいゴットランドを除いては、TOCの変動に明確な傾向を見出すことができなかった。</p><p></p><p>Ⅴ おわりに</p><p> 今後は観測地点周辺の土地利用やその他の溶存物質も検討に挙げ、農地の増減との関わりを議論してゆく予定である。</p><p></p><p>参 考 文 献</p><p>Statistiska centralbyran : https://www.scb.se/</p><p>Statistics Sweden, Regions and Environment Department(2019), Land use in Sweden Seventh edition.</p><p>Swedish University of Agricultural Sciences 2020. Miljödata MVM. https://miljodata.slu.se/mvm/</p><p>Open Street Map : https://www.openstreetmap.org/</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390850475731623808
  • NII論文ID
    130008006609
  • DOI
    10.14866/ajg.2021s.0_145
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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