阿武隈川流域の水環境に関する研究(3)

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  • A Study on the Water Environment in the Basin of Abukuma River (3)

抄録

<p> Ⅰ はじめに</p><p></p><p> 福島県,宮城県を流下する阿武隈川流域の河川水質において,電気伝導度(EC)土地利用との間の関連が示唆される結果を得た(山形ら,2020).本研究では,ECの変動と土地利用についての考察を報告する.</p><p></p><p>Ⅱ 研究方法</p><p></p><p> 2019年10月から2020年9月に支流は月1回,本流は数か月おきに現地調査を行った.調査地点は本流支流を合わせ計61地点(一部欠測含む)であり,現地では気温,水温,比色pH,比色RpH,ECを測定し,採水を行った.採水した河川水について,主要溶存成分の分析を行った.</p><p></p><p>Ⅲ 結果と考察</p><p></p><p> 調査結果より,支流におけるECとその空間分布を明らかにした(図1).変動係数が大きい地点はT29,T18,T16で,それぞれ51%,40%,31%であった.ECの変動係数が小さい地点はT14,T22,T08で,順に6%,8%,9%であった.ECの変動係数が大きい地点において,最大値を記録した月がT29では10月,T18では12月,T16では2月と,その挙動に規則性は認められなかった(図2).一方,ECの変動係数が小さい地点では,その挙動に共通点が認められ,6月,9月,10月が高く,7月,8月,11月が低いという結果であった.</p><p> 変動係数が大きい支流の流域は,建物用地や田畑が占める割合が大きく(T29:69.4%,T18:54.8%,T16:91.9%),河川水質はこうした土地から人為的な負荷を受けやすい.人為的影響を受ける機会が増すことでECの変動係数は大きくなると考えられ,また,その人為的影響は不規則であり,季節変動が認められなかったと思われる.</p><p> 反対に,変動係数が小さい支流の流域は,建物用地や田畑が占める割合が比較的小さい(T08:35.8%,T14:38.5%,T22:38.7%).このため,人為的影響があまりなく,季節変動が表れやすかったと考えられる.7月および8月にECが低くなったのは,梅雨による降水量の増加により,河川水の成分が雨によって希釈されたと考えられ,6月にECが高くなるのは,灌漑のため農業用水を流す際に,農閑期に蓄積された負荷が一気に押し出され,それが河川に流入したことによると思われる.実際に,6月の調査では田植えが終わり,農業用水が河川に流入した状態を確認している.</p><p></p><p>Ⅳ おわりに</p><p></p><p> 今回,人為的影響を受けやすい建物用地や田畑を多く含む流域では,ECの変動係数が高く,一定の変動が認められなかったが,反対に,人為的影響がある土地が少ない流域では,ECの変動係数が低く,その挙動に規則的な共通点が認められたことを明らかにした.今後さらに流域特性と水質の関係を多角的な視点から解明していく.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390850475732104832
  • NII論文ID
    130008006586
  • DOI
    10.14866/ajg.2021s.0_116
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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