脳卒中片麻痺の歩行練習を再考する
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- 萩原 章由
- 横浜市立脳卒中・神経脊椎センター
説明
<p> 脳卒中後の片麻痺の歩行能力改善に関連した練習については,2004年に脳卒中治療ガイドラインが上梓されて以来,廃用症候群を予防し,十分なリスク管理のもとに急性期から早期座位・立位,装具を用いた早期歩行訓練など,積極的なリハビリテーションを行うことが強く勧められる(グレードA),歩行や歩行に関連する下肢訓練の量を多くすることが強く勧められる(グレードA)など普遍的な内容となっており,セラピストはガイドラインに準拠して歩行練習に取り組んでいると考える。</p><p> 中重度の運動麻痺を呈し,特に麻痺側の抗重力伸展活動が不十分な片麻痺者への立位・歩行練習では,長下肢装具や短下肢装具などを用いることで,下肢関節の自由度を制限して運動を単純化でき,片麻痺者やセラピストの身体的な負担も減じるため,歩行量を確保しやすくなる。歩行量の確保つまり歩行を繰り返し練習することで運動学習が,歩行能力の改善につながることは異論がないところであろう。</p><p> 一方で,発症早期からこのような繰り返しの立位・歩行練習が確保されているという点からみると,疑問が残る。十分な量の立位・歩行練習が確保できるツールとして,さまざまなサイズや種類の下肢装具が診療現場に準備されているだろうか。また,下肢装具を用いた,より効果的な立位・歩行練習方法の知識や技術を,毎日の臨床で実体験として習得できる機会が確保されているのであろうか。</p><p> 加えて,近年ロボット技術を利用した歩行練習が注目されている。脳卒中治療ガイドライン2015には「歩行補助ロボットを用いた歩行訓練は発症3か月以内の歩行不能例に勧められる(グレードB)」。と述べられている。数多くのロボットが開発され臨床で導入されているが,ロボットを練習のツールとして効果的に使用するためには,セラピスト自身がそれぞれのロボットの機能特性を理解すること,得られる効果を明確にすること,そのための操作を含めたトレーニング方法の習得が当然必要となる。ロボットをこのように臨床で活用するためには,推進役となる専任スタッフの設置や組織的な運用方法の整備などが必要と考えるが,導入にあたって組織的な仕組みづくりがなされているのであろうか。</p><p> つまり脳卒中後の片麻痺者の歩行練習を考える場合,さまざまな歩行補助具やロボットなどが整いつつあるが,それらはセラピストの代わりをするものではなく,セラピストが歩行再建のための治療で使うツールである。本シンポジウムでは,当センターの取り組みを紹介しつつ,皆さんと脳卒中後片麻痺の歩行練習について考える機会にしたい。</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 47S1 (0), F-12-F-12, 2020
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390850490583560064
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- NII論文ID
- 130008011261
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可