骨格筋ストレッチは心血管疾患患者の運動耐容能を改善するか?

DOI

抄録

<p> 骨格筋のストレッチング体操は,心疾患患者において有酸素運動やレジスタンストレーニングの前に実施するウォームアップとして広く利用されている。近年,ストレッチング体操が,健常者および心疾患患者の血管内皮機能障害や動脈スティッフネスを改善するという報告がされている。血管内皮機能や動脈スティッフネスは,心疾患患者の運動耐容能の規定因子のひとつとされており,これらの改善は心疾患患者の運動耐容能を改善させる得る可能性がある。そこで我々は,安定した重症心不全患者に対して1回20分のストレッチング体操を4週間実施する無作為化比較試験を実施した。その結果,ストレッチング体操は,酸化ストレスの軽減と血管内皮機能の改善を生じ,さらに運動耐容能を増加することが明らかになった。次に,急性心筋梗塞患者の回復期において,定期的な持久力トレーニングに加えて同様のストレッチング体操を4週間実施し,ストレッチング体操の相乗効果の有無を検討した。しかし,心筋梗塞患者では,酸化ストレスの軽減や運動耐容能の増加は生じず,相乗効果は認められなかった。ストレッチング体操は,持久力トレーニングと比較して低負荷であり,屋内で安全に行うことが可能であることから,積極的な持久力トレーニングなどを実施することが困難な患者や運動のコンプライアンスが低い患者に対する運動療法の選択肢のひとつになると考えられる。一方で,ストレッチング体操の効果を十分に得られる対象や運動療法の組み合わせの選定は重要であり,今後議論が必要である。また,骨格筋のストレッチにより酸化ストレスや血管内皮機能が改善するメカニズムについても,まだ不明な点が多く,さらなる研究が必要である。本シンポジウムでは,近年注目を浴びている心疾患患者に対する骨格筋のストレッチング体操における最近のエビデンスを紹介し,“骨格筋ストレッチは心血管疾患患者の運動耐容能を改善するか?”という問いに対して答えていく。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 47S1 (0), G-14-G-14, 2020

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390850490585363712
  • NII論文ID
    130008011529
  • DOI
    10.14900/cjpt.47s1.g-14
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ