狭鼻猿- 広鼻猿分岐前のアリル分化に遡るヒトL-Mオプシン遺伝子分化の起源

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  • Allelic origin of human L and M opsin genes predating catarrhine-platyrrhine split

抄録

<p>ヒトを含む狭鼻猿類の3色型色覚において中長波長感受性を担うLとMオプシンは、遺伝子変換による同一化に晒され、遺伝子領域全体を平均すれば高い塩基配列類似性を示す。その一方で、LとMオプシンの吸収波長の違いは自然選択によって維持されている。我々は以前、数種類の狭鼻猿類を対象にLとMオプシン遺伝子配列の系統樹解析を行い、イントロン領域では狭鼻猿類の各分類群で独立に遺伝子重複した樹形となるのに対し、LとMオプシンの吸収波長の違いに関わるエクソン領域では狭鼻猿類の共通祖先で遺伝子重複した樹形となることを示した。このことは、ヒトのLとMオプシン遺伝子が狭鼻猿類の共通祖先における分化に遡ることと、イントロンを含む遺伝子領域の大部分は遺伝子変換によるL-M間の配列同一化のために本来の系統関係を反映しないことを示している。しかし、狭鼻猿のLとMオプシンの分化の起源がさらに過去に遡るかどうかは不明であった。そこで、本研究では狭鼻猿のLとMオプシン遺伝子の間で配列相違性の高い領域のみを選抜し、広鼻猿、メガネザル、曲鼻猿も含めて系統樹解析を試みた。すべてのエクソンとイントロンを含む遺伝子全長配列を収集するために、ゲノムDNA 試料に対するL/Mオプシン遺伝子領域のtarget captureと大規模並列塩基配列決定を行った。L-M間の吸収波長の相違に強く影響するエクソン3及びエクソン5におけるL-M間塩基相違度を算出し、狭鼻猿類においてその平均値と同等以上のL-M間相違度を示す共通の領域、計282塩基長を選抜した。無根系統樹において、狭鼻猿類のLオプシンクラスターとMオプシンクラスターの間に広鼻猿類、メガネザル、曲鼻猿類のLとMオプシンのアリルが位置する樹形を示した。 このことは狭鼻猿のLとMオプシンは遅くとも狭鼻猿と広鼻猿の分岐前に、すでに分化していたアリルが並列して生じたことを支持している。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390850733129985536
  • NII論文ID
    130008029165
  • DOI
    10.14907/primate.36.0_36_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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