O-1-B20 重症心身障害者の終末期医療と地域連携

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  • 安田 寛二
    独立行政法人 国立病院機構 静岡富士病院 小児科

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抄録

目的 重症心身障害者(以下、重症者)医療においても患者の入院長期化や高年齢化などにより地域の医療機関と連携する機会が増加すると考えられる。当院重症者病棟患者の死亡例について終末期における地域連携の実情を把握する。 対象と方法 当院の重症者病棟入院患者のうち過去10年間に死亡した20例を診療録によって調査した。 結果 (a)年齢:死亡時4歳から65歳、平均35歳(10歳以下2、10歳代から40歳以下10、50歳代4、60歳代4)男15女5。 (b)入院期間:1年から37年、平均17年。 (c)死因(推定)と経緯:(1)突然死6例、うち気道閉塞(窒息)が推定されるもの3、血栓の関与が疑われるもの2、4年間呼吸器管理をされていたが、高熱とともに頻脈が数日つづき心停止したもの1、でいずれも地域機関の関与はなかった。(2)感染症7例、うち3例は重篤な肺炎を長期に反復し1例は経過中に基幹病院で胃瘻造設や感染症の加療を受けた。(3)悪性腫瘍4例、うち精巣腫瘍1、肝細胞癌1、胆管癌1、S状結腸肝臓転移1で、後者3例は高齢の脳性麻痺患者でいずれも基幹病院が関与し、1例は家族のセカンドオピニオン希望、2例は精査を目的としうち1例はERCP検査中に状態悪化した。全例家族側医療側ともに癌治療は選択せず本人への告知はしなかった。(4)イレウス2例、うち1例は重篤なショックのため基幹病院に搬送したが救命できなかった。剖検により虚血性壊死性腸炎と診断された。 (d)以上の調査から地域の医療機関が関与したのは5例で、高齢の悪性腫瘍発症例、重篤なショック発症例などであった。 結論 小規模な当院では重症者の終末期医療は適時な地域連携が不可欠で、病態の解明や治療方針を基幹病院に部分的だが依存した。また悪性腫瘍症例の終末期医療については、本人への告知、緩和ケアなどについて課題が残った。

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