重症熱傷後の血球数の推移と予後に与える影響

DOI
  • 大須賀 章倫
    JCHO中京病院救急科 大阪大学医学部付属病院高度救命救急センター
  • 石原 拓磨
    大阪市立大学大学院医学研究科医療統計学 岐阜大学医学部付属病院先端医療・臨床研究推進センター
  • 清水 健太郎
    大阪大学医学部付属病院高度救命救急センター
  • 新谷 歩
    大阪市立大学大学院医学研究科医療統計学
  • 小倉 裕司
    大阪大学医学部付属病院高度救命救急センター
  • 上山 昌史
    JCHO中京病院救急科

書誌事項

タイトル別名
  • Natural Kinetics of Blood Cells Following Major Burn Injury : Impact of Early Decreases in White Blood Cells and Plateletsas Prognostic Markers of Mortality

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抄録

 【背景】重症熱傷患者において受傷後に白血球や血小板が低下することはしばしば経験する.熱傷後の凝固異常に関する論文はあるが,白血球減少や血小板減少と予後との関連性に関してはいまだ明らかでない.本研究の目的は受傷後早期の白血球減少と血小板減少が重症熱傷患者の予後予測因子となりうるかを検討することである.<br>  【方法】本研究は単施設後方視的研究である.2006年1月1日から2015年12月31日までに当院熱傷センターに入院した熱傷面積20%以上の重症熱傷患者を対象とした.患者背景,血球数(赤血球,白血球,血小板および好中球,単球,リンパ球)を受傷から30日後まで診療録から抽出した.血球数が60日死亡に与える影響を検討するために,各血球数と死亡との関連を年齢と熱傷面積を共変量として調整した多変量Cox比例ハザード解析を用いて死亡のハザードとして算出した.<br>  【結果】280人の患者が対象となった. すべての血球数は受傷後に高値を示したが, その後減少した. 赤血球は徐々に減少し, 受傷後2週間で安定した. 白血球は受傷2日後に急激に減少し, その後増加し安定した. 血小板は白血球よりも急速に減少し, 3日後に最低値に達したのち継続的に増加した. 共変量調整後, 赤血球数が少ないことは1日目 (HR : 0.566, 95%C.I.0.423, 0.759) から5日目まで (HR : 0.524, 95%C.I.0.175, 0.576) 死亡の予測因子であった. 好中球数は危険因子ではなかったが, 3日目のリンパ球数低値 (HR : 0.131, 95%C.I.0.026, 0.646) と10日目の単球数低値 (HR : 0.044, 95%C.I.0.005, 0.396) は危険因子であった. 受傷後3日目 (HR : 0.545, 95%C.I.0.300, 0.981) から30日目までの血小板数低値は常に死亡の予測因子であった. <br>  【結語】初期の血小板減少とリンパ球減少は60日死亡の独立した危険因子であり, 遷延する血小板減少と単球減少も死亡の独立した危険因子であった. これらの所見は, 重症熱傷後の免疫応答のメカニズムを明らかにする可能性がある.

収録刊行物

  • 熱傷

    熱傷 47 (2), 39-47, 2021-06-15

    一般社団法人 日本熱傷学会

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