<i>Scaptomyza</i>属(双翅目:ショウジョウバエ科)の系統進化

  • 加藤 徹
    北海道大学大学院理学研究院生物科学部門

書誌事項

タイトル別名
  • Phylogeny of the genus <i>Scaptomyza</i> Hardy (Diptera: Drosophilidae)
  • Scaptomyza属(双翅目: ショウジョウバエ科)の系統進化
  • Scaptomyzaゾク(ソウシモク: ショウジョウバエカ)ノ ケイトウ シンカ

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抄録

<p>本稿は,Scaptomyza属ショウジョウバエの系統進化に注目し,これまでの系統学研究の結果を概説するとともに,筆者らの最近の研究で得られた知見を紹介した.Scaptomyza属のショウジョウバエは,これまで269種が記載されているが,そのうち,約160種がハワイ列島に固有で,残りは世界中に分布することから,これらはハワイ固有のIdiomyia属とともに,顕著な適応放散の例として有名である.Scaptomyza属の系統的位置については,従来の形態形質を用いた研究から,本属がIdiomyia属と姉妹群を形成し,そのクレードがHirtodrosophila属の姉妹群として位置付けられることを提唱したThrockmorton(1975)の仮説,および,Scaptomyza属とIdiomyia属は姉妹群を形成せず,それぞれ独立に分化したことを提唱したGrimaldi(1990)の仮説の二つがある.しかしながら,分子系統学的手法を用いた一連の研究は,本属がIdiomyia属と姉妹群を形成する点でThrockmortonを支持するが,そのクレードがHirtodrosophila属ではなくSiphlodora亜属と姉妹群を形成する点で,Throckmortonとも異なる見解を与える.また,筆者らの最近の研究により,Scaptomyza属とIdiomyia属の共通祖先は大陸で分化し,それらが別々にハワイに移住したこと,そして,Scaptomyza属においては,大陸からハワイへの移住が複数回生じたことが示唆された.</p>

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