南アフリカにおける最低賃金規制と農業生産

  • 伊藤 成朗
    アジア経済研究所開発研究センターミクロ経済分析研究グループ

書誌事項

タイトル別名
  • Minimum Wages and Agricultural Production in South Africa
  • ミナミアフリカ ニ オケル サイテイ チンギン キセイ ト ノウギョウ セイサン

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説明

<p>本論文では先行研究を選択的にレビューし,南アフリカでの雇用環境を考察した後に,最低賃金への雇用者の対応について南アフリカのデータを用いて吟味した。本論文は最低賃金引き上げ幅が地域によって異なるという自然実験的側面に着目し,引き上げ前の2002年の農業生産データと引き上げ期の2007年の農業データを用いて,その効果を推計した。用いたのは一階差分推計という標準的な推計方法である。推計結果からは全般的に最低賃金引き上げが利潤を圧縮したことが示唆され,一部作物では低賃金雇用を減らしたほか,単位当たり価値を高めたことが示された。この結果は最低賃金近傍での雇用が多いと負の影響があるという先行研究,機械化が進んだという先行研究と整合的でもある。最低賃金規制は賃金率を増やしたものの,一部では低賃金雇用を減らし,熟練や機械を集約的に用いる技術の採用を促して,貧困解消目標に反する結果をもたらした可能性がある。今後の研究では最低賃金の効果を推計するには生産技術の多様性に配慮することが望まれる。政策対応としては,失われた未熟練雇用の転職先を見つけるためにも,最低賃金引き上げ前から職業訓練や他職業経験の機会を提供することで,需給双方にとって転職や採用の費用を引き下げる試みが望まれる。</p>

収録刊行物

  • アジア経済

    アジア経済 62 (2), 24-62, 2021-06-15

    独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所

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