ブナの葉における形態的可塑性の地域間差

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タイトル別名
  • Regional differences in morphological plasticity of leaves of <i>Fagus crenata</i>
  • ブナ ノ ハ ニ オケル ケイタイテキ カソセイ ノ チイキ カンサ

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ブナ(Fagus crenata)についてはこれまで,北方の集団ほど葉面積が大きいことや,陽葉と陰葉の面積の差が大きいことが知られている。本研究では,5地域のブナを対象に,樹冠内における葉の形態変異を調査し,表現型可塑性について,地域間差の有無および,表現型可塑性と遺伝系統および環境条件の関係を明らかにすることを目的とした。葉の形態的可塑性は,開空度よりも相対高(葉の地上高/樹高)と高い相関を示した。これは,相対高が葉の光環境と水分条件の両者を反映しているからであると考えられる。開空度に対する葉面積の可塑性は,遺伝系統の違いと一致した。一方,葉の厚さおよび比葉面積(葉面積/葉乾重)の可塑性は,遺伝系統と一致しなかった。葉の厚さは相対高≒0.5付近でどの地域でも約0.25mmの値を示し,この値を中心に樹冠上部および下部にかけてそれぞれ葉が厚く,薄くなることで可塑性が生み出されていた。また,比葉面積は樹冠の最上部で0.1 m2 g‒1の最低値をとり,樹冠下部においてより大きい値を示す地域ほど可塑性が高かった。ブナの葉の形態的可塑性は,平均値よりも極端な気候条件と相関が高かったことから,環境変動の大きさに対する適応である可能性が示唆された。

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