肝移植の対象疾患としてのミトコンドリア呼吸鎖異常症

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抄録

<p>【はじめに】ミトコンドリア呼吸鎖は、細胞が円滑に十分に機能するために必要なATPを産生している。ミトコンドリア呼吸鎖活性の低下は、細胞の、さらには臓器の機能異常、機能不全の原因になる。当院では2008年以降、肝組織を用いて診断されたミトコンドリア呼吸鎖異常症を16例経験している。いずれも発症時より肝障害や肝不全を呈しており、多くの症例で救命のために肝移植を要した。治療や予後に関して、既報例と併せて考察する。【症例】症例数に男女差はなく、乳児期に発症し嘔吐や体重増加不良が認められる症例が多かった。多くは急性の、一部慢性の肝不全を呈し、凝固異常、高アンモニア血症、低血糖、高乳酸血症、代謝性アシドーシスなどを伴っていた。肝腫瘍を伴う症例も認められた。多くの症例でミトコンドリアの機能に関連した遺伝子の異常や、ミトコンドリアDNAの巨大な欠失などが確認された。肝移植後に判明、または増悪した他臓器の症状が原因で亡くなられた症例や、移植無しで元気にしていたが敗血症で突然亡くなられた症例も認められた。多くの症例は肝移植後、とても元気に社会生活を送られている。【結論】移植決定前の確定診断が容易ではなく、他臓器の状態を含めた予後を予測しにくい等の問題点はあるが、有効な内科的治療法の選択肢が限られており、同疾患の一部の症例に関しては肝移植は有効な治療法となりうると考えられる。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 55 (Supplement), 347_3-347_3, 2020

    一般社団法人 日本移植学会

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