新学習指導要領と地誌学習の方向性

書誌事項

タイトル別名
  • A Direction of Regional Geography Education in New National Curriculum Standard
  • 新学習指導要領と地誌学習の方向性 : 日本の諸地域学習を中心に
  • シン ガクシュウ シドウ ヨウリョウ ト チシ ガクシュウ ノ ホウコウセイ : ニホン ノ ショ チイキ ガクシュウ オ チュウシン ニ
  • Focusing on Jpanese Regional Geography Learning
  • 日本の諸地域学習を中心に

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抄録

<p>1.はじめに</p><p></p><p>我が国の国土に関する地理的認識を深める中項目C(3)「日本の諸地域」の学習は,小,中,高等学校の一貫性の観点から見ると,中学校社会科地理的分野を特色付ける学習といえる。ここでは新学習指導要領におけるその学習のポイントについて確認する。</p><p></p><p>2.「日本の諸地域」の学習に関する改訂のポイント</p><p></p><p>「日本の諸地域」の学習に関する今次の改訂のポイントとして,「考察の仕方」の柔軟化があげられる。</p><p></p><p>「日本の諸地域」の学習については,各地域の自然や産業などを羅列的に取り上げると,学習内容が過剰で学習負担が大きく,本来の目標である地域的特色の理解自体が困難となる。そのため,いくつかの「考察の仕方」を基に地域の特色を端的に示す地理的な事象を中核として内容を構成すること,中核とした地理的な事象が他の事象とも関わり合って成り立っていることに着目して,それらを有機的に関連付けて動態的に取り扱うことなどが大切である。</p><p></p><p>その際の「考察の仕方」については,今回の改訂では従前の七つから柔軟化が図られ,C(2)「日本の地域的特色と地域区分」の小項目(自然環境,人口や都市・村落,産業,交通や通信)に関連した四つの考察の仕方に,生活・文化,地域の伝統や歴史的な背景,地域の持続可能な社会づくりなどに関する事象を中核とする考察の仕方を加えた五つが示された。このことは,諸地域の単なる地誌的な知識の習得に偏重した学習に陥ることなく,より動態地誌的な考え方の趣旨に沿った展開ができるよう意図したものである。</p><p></p><p>3.「日本の諸地域」の学習で育成する資質・能力</p><p></p><p>地理的分野の学習は,地理的な見方・考え方を働かせる課題(問い)を設定し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,目標とする資質・能力を育むことが大切である。ここでは,中核として取り上げた特色ある地理的な事象の成立条件を,地域の広がりや地域内の結び付き,人々の対応などに着目して,他の事象やそこで生ずる課題と有機的に関連付けて多面的・多角的に考察し,表現する学習が求められる。そうした学習を通して,各地域の地域的特色や課題,事象間の関係性を理解させる必要がある。</p><p></p><p>なお,ここに示される「有機的に関連付けて」とは,地域の特色が,様々な事象が結び付き,影響を及ぼし合って成り立っていることに着目して,中核とした事象と他の事象との関連から地域的特色を捉え,その成り立ちを考察することを意味している。ここでの学習を通して,地域という枠組みの中で事象の相互関係に着目して考察する力を育むことが大切である。</p><p></p><p>「日本の諸地域」の学習の後に,地理的分野の学習のまとめとして位置付けられたC(3)「地域の在り方」の学習においては,「日本各地ではどのような課題が見られたか」,「その課題は,私たちの住む地域では,どのような現象として表れているか」などと問い,地域の課題の一般的共通性と地方的特殊性を見いだすとともに,地域に見られる地理的な課題の解決に向けて構想することが求められる。このことを踏まえれば,先行する「日本の諸地域」の学習においては,羅列的に扱わないことに留意しつつ,日本の諸地域の地域的特色や地域の課題に対する関心を高め,基礎的・基本的な事項について着実に理解するとともに,地理的事象を有機的に関連付けて多面的・多角的に考察する力を育むことが大切である。</p>

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