グルタミンの代謝を利用した老化細胞の生存戦略

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細胞老化とは,細胞に酸化ストレスやDNA損傷などのストレスがかかり,不可逆的に細胞増殖が停止した状態をさす.細胞老化は,がん化を防ぐための機構であると考えられている一方で,老化した細胞からは炎症性サイトカインや細胞外マトリックス分解酵素など,炎症やがん化を促進する物質が分泌される.これは細胞老化関連分泌現象(senescence-associated secretory phenotype: SASP)と呼ばれており,加齢に伴う体内での老化細胞の増加は,SASPによるがんや心血管疾患などの様々な加齢性疾患の原因となることが示唆されている.実際,マウスで老化細胞を除去すると,加齢性疾患の発症が抑制され寿命が延伸することが示されている.これまでに,老化細胞に選択的に細胞死を誘導する薬物(senolytic drug)として,Bcl-2ファミリータンパク質の阻害薬などいくつか報告されているが,選択性や副作用などの問題が存在し,効果が高く安全な薬物は未だ見いだされていない.本稿では,老化細胞の生存に必須なグルタミンの代謝経路を発見し,それを利用した新たなsenolytic drugについての報告を紹介する.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Baker D. J. et al., Nature, 530, 184-189(2016).<br>2) Johmura Y. et al., Science, 371, 265-270(2021).

収録刊行物

  • ファルマシア

    ファルマシア 57 (10), 944-944, 2021

    公益社団法人 日本薬学会

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