SDG3に関する国際社会の動向と日本の取組

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  • International trends and Japan's efforts regarding SDG3
  • SDG3 ニ カンスル コクサイ シャカイ ノ ドウコウ ト ニホン ノ トリクミ

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抄録

<p>2015年に採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」は,2030年までによりよい世界を目指す国際目標である.地球上の「誰一人取り残さない」,持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のため,17の目標とその下に169のターゲットを設定し,さらにSDGsの達成度をモニタリングするため232の指標を選定し,先進国と途上国や政府と民間等の垣根を越えた普遍的な取組を開始した.SDG3の下には13のターゲットと28の指標が設定されている.</p><p>国際社会では,2019年 9 月に開催された国連SDGサミット2019で採択された「SDGサミット政治宣言」において,2030年までをSDGs達成に向けた取組を拡大・加速するための「行動の10年」と定めた.また,2021年の第74回世界保健総会では,非感染性疾患を抱える人々の新型コロナウイルス感染症重症化や死亡のリスク,必須保健サービスの中断等が指摘され,SDGs達成に向けた進捗に対する新型コロナウイルス感染症の影響を評価することが必要とされた.</p><p>日本国内では,2015年のSDGs採択後,政府は「SDGs推進本部」を設置するとともに,3つの取組を整理した.まず,「SDGs実施指針」を作成し,2019年には「SDGs実施指針改定版」を公表して国内の基盤を整備し,国内実施と国際協力の両面においてSDGsを達成するための取組を実施することとなった.「SDGs実施指針改定版」には日本が取組を進めるにあたっての 8 つの優先課題が示されており,SDGs3は優先課題 2 「健康・長寿の達成」と優先課題 6 「生物多様性,森林,海洋等の環境の保全」に該当している.</p><p>次に,具体的な施策等は,SDGs推進本部が2018年から「SDGsアクションプラン」にとりまとめている.「SDGsアクションプラン2021」には,新型コロナウイルス感染症の拡大でSDGs達成に向けた取組の遅れが深刻に懸念されていることを踏まえ,取組を加速化していくことが示された.また,次なる健康危機に備えて強靭かつ包摂的な保健システムを構築し,SDG3で示されたユニバーサル・ヘルス・カバレッジを推進することが重要とされた.</p><p>最後に,SDGs推進の取組やSDGs達成に向けた進捗は,「自発的国家レビュー」で確認されている.2021年には,2017年以来 2 回目となる「自発的国家レビュー2021」が作成された.SDG3が該当する優先課題 2 「健康・長寿の達成」では,国内の課題と取組として健康寿命の延伸が,国際協力として途上国の保健・医療システムの強化が重要とされ,SDGs推進体制の強化や進捗評価体制の整備等による取組を進めることとした.</p>

収録刊行物

  • 保健医療科学

    保健医療科学 70 (3), 216-223, 2021-08-31

    国立保健医療科学院

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