精子由来クロマチン凝集作用がマウス1細胞期胚の雌雄前核間で緩さの異なるクロマチン構造を形成する

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Sperm-derived chromatin compaction effect is involved in the establishment of parental asymmetrically relaxed chromatin structure in mouse zygotes

説明

<p>【目的】我々は1細胞期胚の雌雄前核における,ヒストンH2Bの流動性を指標としたクロマチン構造の“緩さ”について解析を行い,精子に由来する雄性前核(mPN)が極端に緩んだ構造をとり,同じ細胞質に共存する雌性前核(fPN)が,mPNよりも締まった構造をとる“雌雄差”を報告している(Ooga et al. 2016)。今回この雌雄差の形成に,精子が果たす役割を明らかにすることを試みた。【方法】eGFP-H2BのmRNA注入未受精卵を用いて,各種1細胞期胚を作製し,受精後8–10時間でzygotic Fluorescence Recovery After Photobleaching(zFRAP; Ooga et al. 2018)を用い,H2Bの流動性を各種胚について解析した。【結果】(1)顕微授精胚と2倍体雌性単為発生胚を作成し,精子がfPNを締めるのかを調べると,精子と共存するfPNは単為発生胚のfPNよりも締まっていた。(2)精子がmPNも締めるのかを単一の前核にして調べるため,除核した卵子に1匹または2匹の精子を顕微授精し作成した雄性単為発生胚,卵子の紡錘体を移植した半数体雌性単為発生胚を調べた。それぞれ単一前核にすると,mPNはfPNよりも締まり,精子数に比例してより締まった。(1)-(2)より,精子が両前核クロマチンへの凝集作用を持つことがわかった。(3)未受精卵に1匹または2匹の精子を注入して,精子による凝集作用を増強した顕微授精胚を作成し,fPNとmPNの凝集作用への感受性を比べた。fPNは1匹の精子で限界まで締まり,2匹の精子を注入してもより締まることはなかった。一方mPNがfPN並に締まるには,2匹の精子が必要で,凝集作用に抵抗性を示した。(4)円形精子細胞,伸長精子細胞,および精子注入胚を作製し,凝集能は精子形成過程のどのステージで獲得されるかを調べると,精子形成が進むに連れ,fPNへの凝集能は強くなった。【結論】精子形成過程で獲得されるクロマチン凝集作用とその感受性の差によって,雌雄差は形成される。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390852647192351616
  • NII論文ID
    130008103954
  • DOI
    10.14882/jrds.114.0_p-69
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ