ブタの脂肪細胞分化におけるV型コラーゲンの重要性

  • 中島 郁世
    国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門
  • 中村 富美男
    国立大学法人北海道大学大学院農学研究科
  • 千国 幸一
    国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門

書誌事項

タイトル別名
  • Essential Role of Extracellular Type V Collagen for Porcine Adipocyte Development

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抄録

<p>脂肪組織は、結合組織が変化したものである。これまでの研究から,脂肪細胞分化には結合組織の主要な成分であるコラーゲンが必要であることが知られている。本研究では,ブタの脂肪細胞分化においてもコラーゲンが必要であるのかどうかを明らかにするため,ブタ皮下組織由来脂肪前駆細胞株(PSPA細胞)に対するコラーゲン合成阻害剤(EDHB)の影響を検討した。免疫染色の結果、線維芽細胞様のPSPA前駆細胞はI,III,IV,VおよびVI型コラーゲンを産生し,脂肪細胞への分化によりその細胞表面上に前駆細胞にはないコラーゲンネットワークを構築することが観察された。遺伝子発現解析の結果,前駆細胞でも十分量のコラーゲンmRNAが合成されているにもかかわらず細胞表面上に形成されるコラーゲンネットワークは脂肪細胞でのみ認められる現象であることが明らかになった。次に分化培地にEDHB 40μMを添加しPSPA細胞自身のコラーゲン生合成を抑制すると,脂肪細胞の表面上に構築されるべきコラーゲンネットワークが消失しただけでなく細胞内の脂肪蓄積量は1/3にまで減少し,加えて脂肪細胞特異的な遺伝子の発現量の低下が見られたことから,脂肪細胞分化にコラーゲンが必要であることが明らかになった。さらにEDHB添加によるPSPA細胞のコラーゲン自己産生能を抑制した状況下で細胞外からコラーゲンを補填した場合,PSPA細胞の脂肪蓄積量が回復するかを調べた。その結果,I,III,IV,VおよびVI型コラーゲンのうちV型コラーゲンでのみ脂肪蓄積量が63.8%ほど回復し,転写因子PPARγ2やアディポネクチン遺伝子の発現量も増加した。 以上のことから,ブタの脂肪細胞分化には細胞外からのV型コラーゲンのシグナルが重要な役割を担っている可能性が高いことが示唆された。</p>

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