今後の日本の社会保障と重症児(者)施策

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抄録

安倍内閣で、内閣官房副長官、一億総活躍や働き方改革担当大臣、厚生労働大臣を担ってきた立場から、日本社会が置かれている現状、今後の社会保障改革の方向性、地域共生社会の実現を目指すために重症心身障害児者施策に求めることについて概説する。 日本の人口は2008年をピークに近年減少局面を迎えており、2065年には総人口が9,000万人を割り込み、高齢化率は38%台の水準になると推計されている。高齢者人口の増加に伴って社会保障制度の持続可能性の確保が課題となっているが、我が国は先進国でもトップクラスの平均寿命を実現しており、高齢化を長寿化と捉えるとむしろこの間の多くの方々の努力の成果と言える。健康寿命の延伸や少子化対策等を引き続き推し進めるとともに、国民誰もがより長く、元気に活躍できて、全ての世代が安心できる全世代型社会保障を構築していく。また、少子高齢化や人口減少という構造的な問題に立ち向かうため、高齢者や若者も、女性も男性も、障害や難病のある方も、誰もが活躍できる「一億総活躍社会」の実現に取り組んでいる。 日本の障害福祉施策は、ノーマライゼーションの理念の下で、累次の見直しが行われてきた。障害者・障害児が、基本的人権の享有主体である個人の尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう必要な支援を行うことにより、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に寄与することを目指している。具体的には、社会福祉基礎構造改革の流れを受け、措置制度が契約制度へと見直されるとともに、平成18年には障害者自立支援法が施行された。その後も様々な障害福祉サービス等の充実が図られてきた結果、現在は、障害者統合支援法等の下、障害児をはじめとする障害福祉サービス等の利用者は年々増加し、障害福祉サービス等に対する予算もここ12年間で約2.8倍となるなど、増加傾向にある。 重症児者施策については、昭和42年に重症心身障害児施設が児童福祉法に位置づけられ、施設整備が進んできた。当時は、在宅で家族が介護を行うか施設への入所という選択肢しかなかったが、平成元年度からは日中活動の場として重症心身障害児通園モデル事業が開始されるなど、在宅支援のための事業が整備されてきた。平成24年の児童福祉法一部改正により障害種別で分かれていた施設体系が通所・入所別に一元化され、重症児の支援も新体系のもと整理された。 現在は、障害児入所施設の在り方についての議論が行われているほか、近年は、人工呼吸器など医療等が必要な超重症児・準超重症児に対する支援の重要性も増しており、医療的ケアへの対応も重要な課題である。 略歴 1955年11月22日生まれ 東京大学卒業後、大蔵省に入省。 倉吉税務署長、主計局主査、大臣官房企画官等を歴任 退官後は、加藤六月衆議院議員秘書を経て、 2003年の衆議院選挙で初当選し、以来、連続6回当選(岡山5区) 第二次安倍内閣にて官房副長官就任以降、一億総活躍担当、 拉致問題担当、働き方改革担当大臣、厚生労働大臣を歴任 昨年10月より、党総務会長に就任

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