P-6-04 自分の中で意味を伴って肯定できた避難所生活

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  • −東日本大震災時の一般避難所での経験−

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抄録

研究目的 東日本大震災発生時の重症心身障害児(者)の経験についての研究では、一般避難所に障害者がいなかったという報告が数多くあるが、実際には一般避難所で数か月を過ごした重症心身障害児(者)もいた。その中に「もっと居たかった」と語る重症心身障害者の母親がいたが、その経験の意味を記述することが本研究の目的である。 研究方法 研究協力者は津波が到来する直前に、地域の一般避難所に避難し、そこで2か月を過ごした重症心身障害者の母親1名である。ナラティブアプローチを参考に、非構造化インタビュー方法を用いてデータ収集し、分析を行った。データは2016年3月、8月の2回にわたって収集した。本研究を行うにあたり、研究者が所属する機関の研究安全倫理委員会の承認を得、研究対象者に研究の説明を行い、同意を得て実施した。 分析結果 研究協力者の子どもは、気管切開、胃瘻を必要としていたが、家族全員で2か月を一般避難所で過ごした。研究協力者がどのようなストーリーとして避難所生活を語ったのかを分析した結果、《1.配慮してくれた避難所内》《2.気まずさを生まない過去の共有》《3.一翼を担う子どもの存在》《4.姉妹を同じ学校に通わせた決断》《5.妹の障害を受け入れた姉》《6.地域で生活してきた延長線上にある現在》の6つのテーマから「自分の中で意味を伴って肯定できた避難所生活」というストーリーが構成された。 考察 重度の障害のある人とその家族が一般避難所で生活できるか否かは、電気や飲食が確保できれば可能になるという単純なことではない。「きょうだい」を含めた家族が地域の中で生活してきた生活の履歴があり、その履歴の先に避難所生活があったから可能であった。災害対策は生活の履歴の部分から考える必要がある。また、避難所生活を振り返るという経験は、子育てや地域の中で生きてきてきたことが肯定される経験でもあったと言える。 申告すべきCOIはない。

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