P-5-08 頭蓋骨開放創を有し連日の頭蓋内洗浄を要する状態で在宅医療移行した超重症児の一例

DOI
  • 安井 ひかり
    地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 神経内科
  • 辻 恵
    地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 神経内科
  • 井合 瑞江
    地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 神経内科

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抄録

はじめに 特殊な医療ケアを必要とする重症心身障害児が在宅医療移行を希望する場合、家族の手技習得、家族の負担、安全性、訪問看護、往診医および地域との連携などクリアすべき課題は多い。 症例および経過 症例は5歳女児。生来健康であったが、4歳8か月時に出血性ショック脳症症候群を発症した。集中治療を行ったが、著しい脳浮腫を呈し脳ヘルニアとなり、広範かつ不可逆な脳障害を呈した。自発呼吸は消失し、汎下垂体機能不全となった。脳浮腫のため頭蓋骨縫合が離開し、頭蓋内膿瘍と瘻孔を形成した。可能な限りの洗浄を継続したが感染コントロールは困難であった。発症7か月時に単純気管切開を行い、同時に壊死した頭蓋骨の除去・デブリドマンを行った。頭蓋骨下に広がったポケットが大きく、長さ14cm幅4cmほどの開放創となった。大脳・小脳組織は全て壊死して体外に排出され、頭蓋内は空洞化した。生命予後不良と思われたが、壊死組織脱落後も連日生理食塩水による創部洗浄を継続したところ頭蓋内の感染は落ち着いた。保護者の心理的負担を危惧して洗浄処置は医療者が行っていたが、家族は在宅療養を強く希望したため母が洗浄処置の手技を習得し発症から12か月で自宅退院した。訪問看護、往診医と連携し、現時点で6か月の在宅療養を継続できている。1日2回自宅で頭蓋内洗浄を行うことで、抗菌薬を持続的に使用せずとも感染は概ねコントロールされている。1〜2か月に1回の頻度で感染が悪化し、入院し静注抗菌薬投与を行うことがある。それ以外の時間を自宅で過ごしており、家族の希望に沿った生活ができている。 結論 高度かつ特殊な医療ケアを必要とする超重症児であり、自宅退院は困難かと思われた症例であるが、家族の強い意思と在宅医療連携により自宅療養が実現した。頭蓋骨開放創、全大脳小脳組織脱落という重症な状態にもかかわらず全身状態安定、長期生存している稀有な症例であるため報告する。 申告すべきCOIはない。

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