1歳児の口蓋部に生じたマダニ刺咬症の1例

DOI
  • 黒厚子 璃佳
    徳島大学大学院医歯薬学研究部小児歯科学分野
  • 岩田 こころ
    徳島大学大学院医歯薬学研究部小児歯科学分野
  • 北村 尚正
    徳島大学大学院医歯薬学研究部小児歯科学分野
  • 松立 吉弘
    徳島大学大学院医歯薬学研究部皮膚科学分野
  • 藤田 博己
    馬原アカリ医学研究所
  • 岩本 勉
    徳島大学大学院医歯薬学研究部小児歯科学分野 東京医科歯科大学大学院医歯学研究部小児歯科学・障害者歯科学分野

書誌事項

タイトル別名
  • A Tick Bite on the Palate: A Case Report

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抄録

<p>マダニは,鳥獣類を主体とした脊椎動物を刺咬し吸血する習性がある。刺咬したマダニが病原体を保有していると宿主はマダニ媒介感染症を発症する可能性があり注意を要する。これまでマダニ人体刺咬の国内での報告は多数みられるものの,口腔内を刺咬した症例報告はない。今回われわれは,マダニが口蓋部を刺咬した可能性が疑われた症例を経験したのでその概要を報告する。</p><p>患児は1歳0か月の男児。口蓋右側中央部に小豆大の境界明瞭,黒色で一部褐色のまだら模様,表面滑沢な弾性硬の不動性の腫瘤を認めた。同日帰宅後より39℃台の発熱と,臀部,手掌,足底に発疹が出現し,近医小児科にて抗菌薬の処方を受けた。6日後に一旦解熱したものの,その2日後に再び発熱がみられたがすぐに解熱した。2週間後に当科を再診した際には腫瘤は消失し,同部に1~2 mm程度の圧痕が数か所とその周囲に水疱性変化を認めた。所見より口蓋部マダニ刺咬症と診断した。3か月後,水疱性変化は治癒し,9か月経過後現在,口腔内および全身症状の再燃なく良好に経過している。</p><p>マダニが媒介する感染症は多く,なかには重症化すると死に至る可能性がある疾患もある。マダニが口腔内に直接侵入し,口腔内を刺咬することは通常は考えにくいことではあるが,何でも口に物を運ぶ低年齢時期では,マダニが付着したものを口腔内に持っていくことによって,刺咬される可能性があることが示唆された。</p>

収録刊行物

  • 小児歯科学雑誌

    小児歯科学雑誌 58 (3), 166-172, 2020-11-25

    一般財団法人 日本小児歯科学会

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