釧路湿原における浮遊砂,窒素,リンの流入・流出特性

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  • Characteristics of suspended sediment and nutrient transport in the Kushiro marshlands

抄録

<p>日本最大の湿原である釧路湿原は,1980年にラムサール条約登録湿地,1987年に国立公園に指定され,タンチョウ,キタサンショウウオなど希少種を含む多くの野生生物の生息・生育の場となっている.釧路湿原は農地拡大や河道の直線化及び市街化に伴い,湿原面積が減少し,湿原環境の急激な変化により,早急な対策をとる必要が生じている.このような課題の解決に向け,「釧路湿原自然再生協議会」(2003年11月発足)では,釧路湿原自然再生の基本的な考え方や目標などを定めた「釧路湿原自然再生全体構想」を策定し,さまざまな施策が検討・実施されている.本研究では,このうち流域における健全な水循環・物質循環の維持・再生を図るために,釧路川流域の物質循環現象の解明として浮遊砂,窒素,リンの流入・流出特性の解明に向けた検討を行ったものである. 調査対象の河川は,釧路湿原へ流入する釧路川(開運橋),幌呂川,雪裡川,ツルハシナイ川,久著呂川,ヌマオロ川,オソベツ川および湿原から流出する釧路川(広里)とした.調査項目は,流量,浮遊砂濃度,栄養塩濃度(窒素,リン)とした。 年間負荷量(2002~2018年)の経年変化は,釧路川本川の流入部,流出部で大きく,月降水量が既往観測年を大きく上回った2016年では負荷量が突出して大きくなった結果となった.また,単位面積あたりの負荷量である平均年間比負荷量(2002年~2018年)は,流出部である釧路川(広里)が最も小さく,湿原内部に浮遊砂やT-N,T-Pが堆積傾向にあることが示唆された.浮遊砂の比負荷量は河川間のばらつきが大きく,流況等の影響を受けやすいと考察された.本報告では,釧路川流域の物質循環現象の解明に向けて,湿原の流入・流出部での土砂や栄養塩のモニタリング調査を行い,大規模出水も含めた湿原流入河川・流出部の負荷量を算出し,釧路川本川の負荷量が大きいこと,大規模出水時の負荷量が大きいこと,また比負荷量の比較から,浮遊砂,窒素およびリンが湿原内部への堆積傾向があることが把握できた.この成果は,今後の湿原環境の保全でも問題となる気候変動などの将来リスクの評価や保全対策事業の整備優先度等にも活用が期待される。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390853509417786880
  • NII論文ID
    130008138021
  • DOI
    10.11520/jshwr.34.0_264
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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