「心理学的人間」の近代

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タイトル別名
  • Homo Psychologicus in Modern Society
  • シンリガクテキ ニンゲン ノ キンダイ

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説明

本稿では、近代社会における心理学と精神医学の役割について論じる。まず、近代社会において狂人が排除されており、この排除に心理学と精神医学は関与している、という事実をめぐる、ミシェル・フーコー(Foucault 1966=1970,1972=1975) の議論を、高橋涼子(高橋 1993)と佐藤俊樹の議論(佐藤 1993)を援用しながら検討する。この検討をつうじて「心理学と精神医学は『心理学的人間』(Foucault 1966=1970)を仮定することによって営まれている」という命題、「『選択─帰責の論理』(佐藤 1993)は近代社会をささえるとともに、狂人を排除する」という命題を確認する。次に、この2つ命題によって、心理学・精神医学の次の三つ役割を説明する。「悪から病へ」という逸脱の意味の変化、逆に「病から悪へ」という変化、あらたな逸脱カテゴリーの発明への貢献という三つの役割である。そのさいコンラッドとシュナイダーによる逸脱の医療化研究(Conrad & Schneider 1980)、ストレス学説の「犠牲者非難」への加担についての研究(黒田 1993, Greco 1993)、共依存の社会学(野ロ 1996)を参照する。

収録刊行物

  • 年報人間科学

    年報人間科学 21 175-190, 2000

    大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室

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