<論文> 菊畑茂久馬<春風><春の唄>シリーズについての一考察

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タイトル別名
  • <Research Paper> A Study on Mokuma Kikuhata's "Spring Breeze" "A Song for Spring" Series
  • 菊畑茂久馬〈春風〉〈春の唄〉シリーズについての一考察
  • キクバタケモキュウバ 〈 シュンプウ 〉 〈 ハル ノ ウタ 〉 シリーズ ニ ツイテ ノ イチ コウサツ

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抄録

菊畑茂久馬 (1935-) は、戦後美術の旗手の一人として知られる画家である。1950年代、福岡を拠点に反芸術運動を展開した「九州派」に所属し、アスファルトやセメントを用いた土俗的な作品を発表した。「私の表現の活動のなかで重要な意味を抱えているのは、モノと絵画表現との葛藤である」と語る菊畑は、オブジェ制作、そして戦争記録画の論考、炭鉱記録画家・山本作兵衛(1892-1984)への私淑、そしてオブジェ、タブローの制作活動を通して常に「絵とは何か」を考え続けてきた。2011年の回顧展「菊畑茂久馬回顧展戦後/絵画」で発表された〈春風〉、そして2015年に発表された最新作である〈春の唄〉に見られるのは、これまでの菊畑作品には見られなかった「抒情」というテーマと、淡い色彩、フラットな画面によって強調される、絵画本来の幻想性であったように見受けられた。本論は、〈春風〉〈春の唄〉について、現時点で先行研究からどのような考察がされているかを明示した上で、菊畑の制作姿勢や絵画思想に変化があった可能性についての検討を視野に入れ、〈春風〉〈春の唄〉に至る経緯の分析を試みたものである。先行研究では詳細に触れられていなかった、2004年〈月ノ光下絵〉をはじめとするドローイング作品は、構図や彩色の仕方から〈春風〉〈春の唄〉へ至る重要な要素があると考える。ドローイング作品の実見調査による考察、これまでの菊畑の作品や菊畑の発言を参照した上で、春シリーズに遡るかたちで考察する。

収録刊行物

  • 芸術学研究

    芸術学研究 22 51-60, 2017-12

    筑波大学大学院人間総合科学研究科

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