<論文>日本の元号・歴史意識とキリスト教

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タイトル別名
  • <Article>Japanese Gengo, Historical Consciousness and Christianity
  • 日本の元号・歴史意識とキリスト教
  • ニホン ノ ゲンゴウ ・ レキシ イシキ ト キリストキョウ

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抄録

日本で途切れることなく定められるようになった最初の元号である大宝は首皇子(後の聖武天皇)誕生に因んだものと思われ、中国の建元が漢の武帝即位を基準とするのとは異なり、キリスト受肉紀元 AD の影響があるのではないかという仮説を立てて検証を試みる。AD は641年には東シリア教会キリスト教とともに唐に伝わっており、久米邦武は聖徳太子伝にキリスト伝の影響があるとし、 7 世紀後半に唐からそれが伝わったと論じたが、根拠薄弱と批判されてきた。中国経由ではなく、インド人夫婦をはじめとするドヴァーラヴァティー(現在のタイ国チャオプラヤー川流域)の遣唐使節が654年日向に漂着し、彼らによってキリスト教が伝えられたことが、天智朝において製作されて流通した日本最初の鋳貨である?銀貨(無文銀銭)や、インドから中国を経ずに朝鮮半島を経由して日本に渡来したとされる善光寺本尊如来によって裏付けられ、善光寺信仰のほか、祇園信仰、怨霊・御霊信仰や春秋彼岸会にもキリスト教の影響を読みとることができる。日本に定着した不可逆的な歴史意識は終末を欠いており、ダーウィンの進化論との相性がよいことを丸山真男は指摘し、岡本太郎は ’70年万博の太陽の塔のなかに生命の樹としてそれを表現した。終末思想は周期化されて辛酉革命・甲子革令の思想に基づく改元慣行となった。後醍醐天皇や孝明天皇の在位中にそれらによる改元があって討幕運動が高まり、1921辛酉年には原敬首相暗殺が起こり、その前後に大正デモクラシーが昂揚した。また、日本固有の進化論的歴史意識は高度経済成長後アイドルが担うようになった。

収録刊行物

  • 国際日本研究

    国際日本研究 12 1-22, 2020-02

    筑波大学人文社会科学研究科国際日本研究専攻

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