inner speech と音韻的ワーキングメモリー

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  • inner speech ト オンインテキ ワーキングメモリー

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我々の多くはふだん、何かについて考えたり、物思いにふけったりするときに頭の中でことばを話す。また小説やテレビドラマなどにおいても、登場人物が頭の中で思っていることはしばしば内的なモノローグとして表現されることがある。このような「頭(心)の中でことばを話す」という広く知られた現象(心的現象)に対して、心理学では「inner speech」という用語を与えている。しかしこの inner speech という語で指し示される内容は今日の研究者たちの間で完全に一致しているとは言い難い。それどころか、 inner speech という語を用いるとき、研究者たちはそれを心理学的な用語としてではなくもっと一般的で自明な語として用い、そうすることによってその明確な概念規定を避けようとしているように感じられる。なぜこのような状況が生じているのか。その大きな原因は、これまでの研究において inner speech を「頭の中でことばを話す心的現象」という観点からとらえ、その心的現象としての側面を問題にしたことがほとんどなかったことにあるのではないかと思われる。そのため inner speech が心的現象としてどのような性質や特徴を持っているのか、現時点ではまだまだ解明されていないと言っても過言ではないのである。  本論文では、このような問題関心に基づいて inner speech を「頭の中でことばを話す」という心的現象としてとらえる。そしてこうした観点から inner speech の研究をすすめていく上での理論的基盤を構築する1つの試みとして、心内で inner speech を経験することにはどのようなメカニズムが関与しているのか、ということについて考えてみたい。そしてその際に注目するのが、今日の認知心理学において最もよく知られた記憶モデルの1つであるワーキングメモリーモデル、特にその構成システムの1つである音韻ループと呼ばれるシステムである。以下ではまず始めに inner speech の特徴について考察した後、ワーキングメモリーモデルについて紹介し、それらに基づいて inner speech と音韻ループシステムとの関係に就いて議論してみたい。

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