女性にとっての家族計画の意味と行動 : ニジェールの一農村におけるエスノグラフィー

書誌事項

タイトル別名
  • The family planning meaning and practices of women : ethnography of a rural community in Niger
  • ジョセイ ニ トッテ ノ カゾク ケイカク ノ イミ ト コウドウ : ニジェール ノ イチ ノウソン ニ オケル エスノグラフィー

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説明

ニジェール農村部に暮らす女性にとっての家族計画の意味と行動を明らかにすることを目的に、エスノグラフィーを用いてA 村を対象とした参加観察、エスノグラフィックインタビュー、2 次資料収集等を行い分析した。A 村では<子供は神が授ける財産>であり、子供数は自分たちが決めるものではないとしながらも、<出産経験を重ねるごとにアルベーリ(卓越した大人)に近づく>ため、また<1 人や2 人しか産まないと魔力をかけられた不妊女性>というラベリングから逃れるために、女性は【閉経まで、孫ができるまで産み続ける】ことを望んでいた。そして、産み続けるためには<妊孕力を温存する>、<コーランの教えを守る>必要があると考えており、<妊娠すると母乳に毒が含まれ授乳中の児が亡くなる>ことを避けるためにも【出産をフーランザム(休息)する】ことを望んでいた。すなわちA 村の女性にとっての家族計画とは『休息しながら産み続ける』ことであった。女性たちは<授乳期間の延長>や<神の力を引き寄せる>ことに努め、また<産後の休息慣習や夫の出稼ぎを活用する>など【スペーシング方略を能動的に行使】していた。今日、女性たちはこの方略に<近代的避妊法を取り込み>、主体的に避妊方法を選択していたが、副作用に対する対応や情報の不足等に伴う新たな課題が生まれていた。A 村には出産間隔をおくことを重視する文化的価値観が存在し、この価値観を尊重した支援は安全な妊娠出産を促進する可能性がある。しかし女性たちの健康増進に向けては既存の家族計画サービスの質の改善や、近代的避妊法の普及に伴う新たな課題への対応が必要であることが示唆された。

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