古英語動詞ge-neah「十分である」の印欧語の背景について : 非ブルータマン的方法を適用して

DOI HANDLE Web Site オープンアクセス

書誌事項

タイトル別名
  • The Indo-European Background of Old English ge-neah `is sufficient ': Application of a Non-Brugmannian Method
  • Indo European Background of Old English ge neah is sufficient Application of a Non Brugmannian Method

この論文をさがす

抄録

Tanaka(2001b)は,印欧祖語に関する最近の「非ブルータマン的」再建モデルに基づ いて,印欧諸語における任意の動詞に関して,祖語における動詞の(形態,意味に関する) クラスを推量する一般的方法を提案している。本稿の目的は,この方法に基づいて,古英 語第V類過去現在動詞ge-neah「十分である」の歴史的由来について,もっとも蓋然性の 高いと思われる新しい推論を与えることである。  当該の過去現在動詞は,印欧祖語のタイプH語基 *Hn-ek̑- (語根*Hen- のゼロ階梯形態 +e- 階梯の語尾*ek̑-)に由来する動詞である。印欧諸語における同じタイプⅡ語基に遡る 動詞すべての意味特性,形態特性を,上記の方法に照らして分析した結果,当該の動詞は 印欧祖語において,**Hnek̑-m/s/t ‘(agentiverly/ voluntarily) gain, attain, reach’というactivemome 動詞であった可能性は低く,*Hnok̑-h_2e/th_2e/e ‘be in the state of gaining, attaining, reaching (the goal, norm, standard, etc.)’という, inactive-stative 動詞であった可能性が高いということを明らかにした。  また,タイプI語基*Hen-k̑- (語根*Hen- のe-階梯形態+ゼロ階梯の語尾*-k-)から派 生した動詞群に関しても同様の分析をした結果,それらの動詞群からも,当該の語意から active動詞が印欧祖語の時代に派生していたという証拠は得られないということを主張 した。

収録刊行物

  • 言語文化論究

    言語文化論究 14 127-141, 2001-07-12

    九州大学大学院言語文化研究院

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ