国際化する家具市場とラバーウッド利用の展開

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  • 井出 久美子
    九州大学大学院生物資源環境科学府森林資源科学専攻
  • 佐藤 宣子
    九州大学大学院農学研究院森林資源科学部門

書誌事項

タイトル別名
  • Globalizing furniture market and expansion of Rubberwood utilization
  • コクサイカスル カグ シジョウ ト ラバーウッド リヨウ ノ テンカイ

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抄録

現在, 国内家具市場が縮小し, 輸入家具市場が拡大している. バブル崩壊以降, 消費者購買動向の変化に対応するため, 企業が開発輸入化をはかったことがその背景にあった. 国内製品から海外低価格品にシフトする企業, また海外に生産拠点を持つ企業などその革新は進んでおり, 現在の家具輸入増大につながっている.  本研究で調査対象とした, 輸入家具市場拡大を支えたといわれる家具専門店・N 社では, 海外の子会社において製造・輸入代行をするなどの事業体制をしき, また, 徹底した流通ルートの効率化をはかるなど, 独自の輸入家具販売体制を構築していることがわかった. そして, 製品原料にラバーウッドを使用することによって, 消費者ニーズに合った低価格商品の開発を行うことにより, 規模拡大していることも聞き取り調査により明らかになった.  一方, そのような企業のグローバル化によって, 国内生産の空洞化が進んでおり, 旧来の家具生産地である大川産地においてもその規模縮小が見られた. また, N 社のような製品開発を行った企業には打ち勝つことができず, 大川で生産する家具原料としてのラバーウッド材の輸入はほとんど行っていなかった. その中で M 社のように, 同産地内で海外に生産拠点を移し, ラバーウッド製品として輸入販売する企業が登場し, 現在, 同産地内で売上高トップを誇るなど, 規模拡大していたことも明らかとなった. 以上のことから, 家具企業における展開に新素材・ラバーウッドが大きく関与していることが示唆される. 同時に, 日本国内のラバーウッド利用は増加しているものと思われる.  しかし, このラバーウッドの利用が増大することによって, 原材料産地における資源管理が問題となる. ラバーウッドプランテーションは栽培面積の小さい個人農園が多いといわれている点からも (岡本, 2003), 今後のさらなる利用増大に応じてその供給は可能かどうかが課題となる. 今後, 主なラバーウッド供給地及び加工国での実態を調査することにより, ラバープランテーションとアジアの森林問題に関する考察が必要である.

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