中小林家の活性化と森林組合活動
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- 堺 正紘
- 九州大学農学部附属演習林
書誌事項
- タイトル別名
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- On the Relationship Between the Revitalizing of Smaller Forest Households and Forest Owners' Cooperative Activities
- チュウショウ リンカ ノ カッセイカ ト シンリン クミアイ カツドウ
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説明
森林を有効に活用しながら健全に維持していくことば森林経営に課せられた任務であり,それによって森林は,経済財として機能するだけでなく,環境財(公共財)としての機能をも発揮することになる.しかし,森林・林業をとりまく厳しい環境のもとでは,これを個別林家によって実現することは難しい.このような状況を克服するためには,地域内の林業及び木材の生産・流通・加工過程を一体的に組織した地域システムの形成が必要であり,その中核的な担い手として期待されているのが森林組合,とりわけ林産・販売事業である.そして,この地域システムの形成を中小林家の立場からみると,林産物の販売機会の増加であり,生産,流通コストの縮減による所得の向上という効果もある.森林組合の林産・販売事業の拡大は,地域における林業生産の拡大だけでなく,中小林家の森林経営にとっても大きな意味があると思われるのである.本報告では,森林組合員のアンケート調査によって,中小林家の経営活動が森林組合の木材取扱量(林産・販売事業量の合計)の大小と相関があること,したがって中小林家の活性化のためには森林組合の販売面での活動の活発化が必要であり,そのためには広域合併による森林組合の強化が必要であることを明らかにしている.その概要は次のとおりである.1)調査林家の山林保有面積は1~5haが34%でもっとも多いものの,5~10haの20%,10~20haの17%,20~50haの11%など5~50haで48%(九州平均6%)を占めており,中小林家の割合が著しく高い.森林はスギ人工林が多く,しかも大半の林家が間伐期の人工林を抱えている.2)林家の森林作業の実施状況は造林,下刈,枝打とも全般に活発であり,森林組合の木材取扱量・活動水準との相関も認められない.間伐は活動水準の高い組合ほど実施頻度が高い傾向がある.3)木材の販売は森林組合の活動水準ときわめて高い相関がある.すなわち,①主伐の実施率は木材取扱量2万m^3以上というもっとも活動水準の高い組合では28%であるが,3000m^3未満の低い類型では数%にすぎない.②最近5,6年間の間伐実施率は80~90%で組合による差は少ないが,間伐材の処分方法は,活動水準の低い組合では「切り捨て」や「自分の家で使った」が多いのに対して,高い組合では「販売した」の比率が高まっている.③賃金調達源としての森林の評価も,活動水準の高い組合では「まとまったお金がいるとき山林を伐採する」林家が過半を占めるが,低調なところでは20%程度にすぎない.また,④伐採する場合の販売先も活発な組合では「森林組合」が高い割合を占めるが,低調な組合では「分からない」が多い.4)活動水準の高い森林組合は中小林家の伐採性向の高い組合でもあるが,これらの組合の経営基盤は組合員経営森林面積1万ha以上,出資金4,000万円以上常勤役職員10人以上であり,収益面でも優れた実績を残している.しかし,多くの森林組合の組織,経営基盤は小規模であり,事業活動の拡大の大きな制約となっている.森林組合が活動水準を高め,中小林家の活性化に寄与するためには組織,経営基盤の拡大が必要であり,それには広域合併がもっとも現実的で,有効である.
収録刊行物
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- 九州大学農学部演習林報告
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九州大学農学部演習林報告 69 55-76, 1993-12-24
九州大学農学部附属演習林
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390853649692932864
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- NII論文ID
- 110001379468
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- NII書誌ID
- AN00055178
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- DOI
- 10.15017/10883
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- HANDLE
- 2324/10883
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- NDL書誌ID
- 3869586
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- ISSN
- 04530284
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- IRDB
- NDLサーチ
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可