自然休養林の利用と管理 : 菊池渓谷におけるレクリエーション利用の実態と問題点

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  • Visitors to National Recreation Forest and its Operation : Situation and Problems of the National Recreation Forest in Kikuchi Valley, Kumamoto District
  • シゼン キュウヨウ リン ノ リヨウ ト カンリ キクチ ケイタニ ニ オケル

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抄録

近年,野外レクリエーション人口が増加したが,これに対応するために,林野庁(国有林)は,昭和44年以来,自然休養林を全国各地に設置し,昭和61年4月で92カ所,113503haに達している. 本論文は,自然休養林の1つである,くまもと自然休養林・菊池水源地区(菊池渓谷)のレクリエーション利用の状況と,管理運営の在り方を分析し,国有林のレクリエーション利用における問題点を明らかにしたものである. 本論文は,昭和49年に現地でアンケート調査した結果を分析したものに,昭和62年に追跡的に調査した結果を加えて構成されている.それらの内容はつぎの3点に要約される. 第1に,菊池渓谷の来訪者の推移をみると,菊池渓谷の側面を走る阿蘇・菊池スカイラインが開設された昭和49年から来訪者が急増し,昭和51年に67.4万人となった.それをピークとして以後減少したが,最近では年間約50万人の来訪者がみられる. 第2に,管理運営については,菊池営林署が森林自体の経営管理を行なうが,レクリエーションを目的として来訪した利用者の整理や,林内の清掃,諸施設の設置等については,「菊池渓谷を美しくする会」に委託している.「美しくする会」は,昭和46年に発足した自然休養林保護管理協議会の実行団体として昭和49年忌ら活動している.会の構成員は,菊池市,菊池市交通安全協会連絡協議会,菊池市商工会,菊池市観光協会,菊池市区長会,菊池市婦人会,菊池市青年団,林野弘済会,九州産交,熊本電鉄である. 「美しくする会」は,昭和52年以来,来訪者から清掃協力費(現在,100円),自動車整理費(同,100円)を受取り,それをもって管理運営している.協力費は,昭和61年までに約1億6,900万円に達している.それらの使途は,清掃費9,600万円(57%),施設整備費5,400万円(32%),管理費1,900万円(11%)に分けられる. 第3に,国有林は,野外レクリエーション需要の増大に対応して,自然休養林のみならず生活環境保全林やスキー場などの整備を進めているが,管理運営については,地方自治体,第3セクター,民間企業に委任する方針を採っている.しかし,菊池渓谷のように協力費の入手に好都合な地形と道路をもつ自然休養林は少ないと考えられる.そのことから,さきの3者に管理運営を委託する以上,それらの負担できる額,つまり財政状態で自然休養林の管理が左右されることになる.加えて地域経済の発展や休養胃内での売店の売上増加を目指して利用者の過剰入込みが一段と進められる可能性がある.それは多くの場合,森林の破壊につながることが多い. ところで,昭和62年5月に総合保養地域整備法(いわゆるリゾート法)が制定され,その中に国有林の活用が明記されている.それはますます国有林の貴重な森林の破壊につながる恐れがある.したがって,林野庁は国有林をレクリエーション利用に供する以上,その管理運営の在り方について再考する必要がある.

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