林内の気温鉛直分布が蒸散・光合成に与える影響

  • 小松 光
    九州大学大学院農学研究院森林資源科学部門森林生態圏管理学講座
  • 熊谷 朝臣
    九州大学大学院農学研究院森林資源科学部門森林生態圏管理学講座
  • 堀田 紀文
    東京大学大学院農学生命科学研究科

書誌事項

タイトル別名
  • Effects of vertical air temperature distribution within forest canopies on photosynthesis and transpiration

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抄録

本研究では、林内気温鉛直分布を正確に再現することが、林内光合成・蒸散鉛直分布を多層モデルで推定するのに不可欠かどうかを調べた。筆者らは既存文献を踏査して、林内で計測される鉛直方向の気温差が通常3.0℃以下であることを示した。つづいて、単葉スケールの蒸散・光合成モデルによる計算によってつぎのことを示した。気温が約15℃以上のとき、3.0℃の気温の差が引き起こす光合成・蒸散量の違いは、林内で通常計測される光合成有効放射量の鉛直方向の差が引き起こす光合成・蒸散量の違いよりも小さい。一方、気温が約10℃以下のとき、3.0℃の気温の差が引き起こす光合成・蒸散量の違いは、林内で通常計測される光合成有効放射量の鉛直方向の差が引き起こす光合成・蒸散量の違いよりも大きいが3.0℃の気温の差が引き起こす光合成・蒸散量の違いは、単葉スケールの蒸散・光合成モデルの予測精度と同程度である。したがって、現時点において、林内気温鉛直分布を正確に再現することは、林内光合成・蒸散鉛直分布を多層モデルで推定するのに不可欠ではないと結論した。

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