首都圏上流域のダム貯水池が渇水時流量に与える影響

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  • Evaluating the contribution of reservoir dams located upstream of the Tokyo metropolitan area during low flow periods

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抄録

ダム貯水池への流入量(Qin)と流出量(Qout)をもとにした流況曲線による解析は, ダム貯水池の渇水時流量の調節への貢献を正確に表現しないことがある. 流況曲線を用いた解析において, Qout = 0のデータはダム貯水池による渇水時流量の低下と解釈されるが, 現実にはQout = 0のデータはしばしば降水量の大きいときに記録されており, このことはQout = 0のデータが洪水緩和のためのダム制御によるものであることを意味している. このように, 流況曲線による解析はQout = 0のデータを誤って解釈するという問題があるため, 本論は, この問題を避けるための代替的な方法を考案した. この方法は, ダム貯水池による流量増加(Qout - Qin)を, ダム貯水池がなかった場合の流量に相当するQinとの関係から評価するものである. この方法を, 首都圏上流域にある7つのダム貯水池に適用したところ, 6つのダムにおいて, Qinの値が解析期間中でもっとも小さいときに, Qout - Qinがゼロより大きかった. この結果は, この6つのダムが渇水時流量の増加に貢献していたことを意味している. この結果は, 流況曲線による解析結果とは異なるものであった. 日本の主要なダム貯水池におけるQinとQoutのデータは公表されているため, 本論で提案した方法は, 日本のダム貯水池が渇水時流量の増加に貢献しているか否かを評価するのに役立つものである.

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