温帯混交林における樹木の成長と死亡に隣接固体が及ぼす影響の30年間の変化

  • 榎木 勉
    九州大学大学院農学研究院環境農学部門森林環境科学講座
  • 菱 拓雄
    九州大学大学院農学研究院環境農学部門森林環境科学講座
  • 田代 直明
    九州大学大学院農学研究院環境農学部門森林環境科学講座

書誌事項

タイトル別名
  • Changes in the effects of neighboring trees on tree growth and mortality in a temperate mixed forest for 30 years

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抄録

九州大学農学部附属宮崎演習林内の針広混交林において,樹木サイズと隣接個体の胸高断面積合計が樹木の成長と枯死に及ぼす影響を,シカの個体数が増加した30 年間の前期(1984-1996 年)と後期(1996-2014 年)とで比較した。本調査地では下層植生が1990 年代から衰退し,2000 年代ではほぼ消滅した。調査期間の後期に更新した樹木のほとんどは,シカが採食しないシキミとアセビであった。小径木は成長速度が遅く,枯死率が高い傾向が調査期間を通じて観察された。調査期間の前期では,隣接個体が枯死率に有意に影響を及ぼしていたが,後期では影響が見られなかった。一方,隣接個体の成長に及ぼす影響は調査期間を通じて観察された。以上の結果から,本調査地において,シカの個体数増加は樹木の個体間競争に影響を及ぼした可能性が示唆された。これらの影響は樹木の生活型や種によって異なっていた。

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