Markedness in Casual Speech

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  • カジュアル・スピーチにおける有標性について

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カジュアル・スピーチにおいては,母音や音節の脱落や音素の融合による様々な縮約形が頻繁に観察される。「食べている」→「食べてる」,「買っておく」→「買っとく」などは頭子音のない音節の回避のため,また,「あなた」→「あんた」,「あたたかい」→「あったかい」などは母音脱落に伴う音節数減少による発音の簡略化のためと考えられるが,では,「てしまう」→「ちゃう」,「けれども」→「けど」,「ければ」→「きゃ」などの縮約は,どのように説明したらよいのであろうか。日本語には古代から唇音退化現象や単顫音を避ける傾向が見られていたが,このような傾向は現代語においても,特にカジュアル・スピーチの中に引き継がれているようである。本稿では最適性理論に基づき, *LAB (Prince & Smolensky 1993), * ɾ (McCarthy & Prince 1995)など既存の制約にMAX-IO (McCarthy & Prince 1994)を細分化させた制約を加えることにより,上記縮約形の解明を図る。MAX-IOの細分化に関しては,一部の例外を除き,基本的には縮約が助動詞・活用語尾・接続助詞などのいわゆるclosed-class itemに限られていることから,まずは名詞・本動詞などのopen-class itemからの音素の脱落を禁止する制約を提案,続いて,単顫音が助動詞の語幹からも脱落しないことから,語幹からの音素の脱落を禁止する制約を,更に,形態素の最初と最後の子音が脱落しにくいことから,これらの音素の脱落を禁止する制約を提案する。本稿では,音韻的に見れば基底を異にするとも思われる上述の3例も,実は制約の相互作用によって生じたものであることを,制約のランク付けを確立することにより立証する。

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